本記事では、老化の原因となる「糖化」と「酸化」の基礎知識や予防法をお伝えします。
体を老けさせる糖化と酸化
私たちの体を老化させる主な原因として、「糖化」と「酸化」があります。
体の糖化と酸化が進むにつれて、以下のような弊害が生じます。
- 病気の発症(がんや心血管疾患、生活習慣病など)
- 体調の悪化(慢性疲労や肩こり、やる気の低下など)
- 容姿の衰え(シミ、シワ、たるみ、白髪、脱毛など)
体の糖化と酸化の程度を左右する要因には、以下のようなものがあります。
- 生活習慣
- 生活環境
- 心身の健康状態
これらの要因を正していくことにより、老化の予防にくわえ、既に生じている老化現象の改善が期待できます。
以下で、糖化と酸化について詳しくみていきましょう。
糖化の基礎知識
糖化(メイラード反応)は「体の焦げ」と表現され、進行するとさまざまな病気や容姿の衰えを招きます。
体が焦げる(糖化する)主な原因は、
AGEsは、食事でとりすぎた糖質が体内のたんぱく質と結びつき、体温で熱せられることで生成される「老化促進物質」です。
この物質にはさまざまな種類があり、アルデヒド由来のものもあります。
体内でアルコールが分解されることで生じる「アセトアルデヒド」もAGEsを生成することから、「糖質のとりすぎ」にくわえて、「飲酒」も糖化を促進するといえます。
AGEsは、体内の細胞を劣化させ、がんや糖尿病、動脈硬化、アルツハイマー病、心疾患、呼吸器疾患、脳卒中、骨粗しょう症、白内障などの病気を引き起こします。
また、シミやシワ、たるみ、くすみ(黄ばみ)、白髪、脱毛などを引き起こすため、美容の面においても看過できない存在といえるでしょう。
AGEsによる体への悪影響を「糖化ストレス」といいます。
この「糖化ストレス」を減らすことが、アンチエイジングの基本となります。
糖化の防ぎ方
糖化を防ぐためには、前述した「AGEs」の発生を抑える必要があります。
そのためには、「AGEsが増える原因」を知り、それらを正したうえで、「AGEsを減らす行動」を継続的に実践する必要があります。
AGEsが増える原因
前述したとおり、AGEsは、摂取した糖質が体内のたんぱく質と結合することで発生します。
そのため、糖質を過剰に摂取したり、糖質があまり使われない生活を送っていたりすると、脂肪のみならずAGEsの量も増えていきます。
AGEsが増える具体的な要因としては、以下のようなものがあります。
- 暴飲暴食(糖質の過剰摂取)
- 早食い
- GI値の高い食品の摂取
- 朝食を抜く(低血糖となり、昼食時に血糖値が急上昇する)
- 飲酒(アセトアルデヒド由来のAGEsが増える)
- 喫煙(AGEsの生成を促進する)
- 運動不足(体内の糖が余り、AGEsの発生につながる)
- 睡眠不足(AGEsの生成を促進する)
- 加齢
これらは、「血糖値の上昇」や「体内アルデヒドの増加」、「AGEsの生成」を促進します。
AGEsは、空腹時の血糖値が高かったり、食後に血糖値が急激に上がったり(血糖値スパイク※)することで急激に増加します。
AGEsを減らす方法
AGEsの増加を抑える方法には、以下のようなものがあります。
- 糖質および高GI値の食品をとりすぎない(甘いものや炭水化物を極力控え、低GI値の食品を食べる)
- 食事は、「ゆっくり・よく噛む・腹八分目」を心がける
- 野菜(食物繊維)→肉・魚(たんぱく質)→汁物→お米や玄米(炭水化物)の順に食べる
- 栄養バランスのとれた食事を心がける
- 朝食をとる(昼食時の血糖値の急上昇を抑える)
- 禁酒(体内のアセトアルデヒドを増やさない)
- 禁煙(受動喫煙も避ける)
- 有酸素運動をする(食後の軽い運動が効果的)
- 筋力トレーニングをする(基礎代謝を上げる)
- 適切な睡眠時間を確保する(7〜7.5時間程度)
これらは、慢性的な高血糖や血糖値スパイク、および体内アルデヒドの蓄積を防ぎます。
「血糖値の上昇」と「アルデヒドの増加」を抑えるとともに、「AGEsの生成を促す行動(喫煙や睡眠不足)」をとらない、ということが、糖化を予防するうえで重要となります。
なお、適度な運動の目安は以下のとおりです。
- できれば毎日、有酸素運動を行う(少なくとも週に3〜5日行う)
- 1日の運動時間は20〜60分間(週の合計:150分以上)
- 筋力トレーニングを週に2〜3回行う
上記は、糖尿病の治療に効果があるとされているものです。
食後の軽い運動は、血糖値スパイクを抑える効果があるため、可能であれば、ウォーキングなどの有酸素運動を食事の後に行うとよいでしょう。
ただし、食後の運動は、消化にはあまりよくないので、決して無理はしないでください。
また、健康に不安のある方は、医師に相談したうえで、無理のない範囲で運動を生活に取り入れてみてください。
酸化の基礎知識
酸化は「体のさび」と表現され、進行すると、糖化と同様にさまざまな病気や容姿の衰えを招きます。
体がさびる(酸化する)主な原因は、増えすぎた活性酸素です。
この物質は、さまざまな要因(後述)によって増加するため、しっかりと対策をとる必要があります。
活性酸素は、細胞伝達物質や免疫機能として働くため、なくてはならない存在ですが、体内で過剰となった活性酸素は、細胞の脂質や遺伝子を攻撃し、がんや心血管疾患、生活習慣病などの原因となります(活性酸素によって酸化した脂質を「過酸化脂質」※といいます)。
くわえて、肌荒れやシミ、シワ、たるみ、白髪、脱毛などの原因となるため、美容の大敵ともいえます。
体内で活性酸素が過剰に生成され、「抗酸化防御機構」という活性酸素から体を守るシステムのバランスが崩れた状態を「酸化ストレス」といいます。
「酸化ストレス」の状態に陥る前に手を打つことが、アンチエイジングにおいて重要となります。
酸化の防ぎ方
酸化を防ぐためには、前述した「活性酸素」の発生を抑える必要があります。
そのためには、「活性酸素が増える原因」を知り、それらを正したうえで、「活性酸素を減らす行動」を継続的に実践する必要があります。
活性酸素が増える原因
呼吸によって体内に取り込まれた酸素は、アデノシン三リン酸(ATP)というエネルギーを作り出す燃料として使われ、その副産物として活性酸素が発生します。
また、活性酸素は、以下のような要因によっても増加します。
- 激しい運動(呼吸量が増加し、活性酸素の発生を促す)
- 紫外線の浴びすぎ
- 過度なストレス
- 睡眠不足
- 飲酒・喫煙
- 酸化した食品(油など)の摂取
- 添加物を含む食品の摂取
- 薬剤の使用
- 放射線の被爆
- 大気汚染物質(ダイオキシンや排気ガス)との接触
- 加齢
このなかで注目すべきは、「激しい運動」でしょう。
健康意識の高い人ほど、運動を頑張りすぎる傾向にあります。
運動をすることは、健康な体を維持するうえでの基本となりますが、「激しい運動は逆効果になる」ということを留意しておきましょう。
活性酸素を減らす方法
活性酸素の増加を抑える方法には、以下のようなものがあります。
- 抗酸化作用の強い食品を摂取する
- 軽めの運動を心がける(抗酸化酵素の働きが強まり、体の酸化が抑えられる)
- 紫外線を浴びすぎない(適度な紫外線は、骨の形成や精神の安定に必要)
- ストレスをためない
- しっかりと睡眠をとる(7〜7.5時間程度)
- 禁酒・禁煙
- 酸化した食品を食べない
- 添加物が含まれている食品をとりすぎない
- 不要な薬剤を使用しない
- 放射線の被爆に注意する
- 大気汚染物質(ダイオキシンや排気ガス)との接触を避ける
これらを継続的に実践することにより、活性酸素の過剰な発生を抑えられる可能性があります。
ちなみに、抗酸化作用が強い栄養素としては、ビタミンA・C・Eやポリフェノールなどが有名ですが、もっとも強力な抗酸化作用がある栄養素は、「アスタキサンチン」です。
アスタキサンチンの抗酸化力は、ビタミンCの約6000倍ともいわれいます。
アスタキサンチンは、天然色素(カロテノイド)の一種で、サケ、エビ、カニ、イクラなどの魚介類に多く含まれているため、これらの食品を積極的に食べることをおすすめします。
とはいえ、毎日魚介類を食べるのも大変だと思うので、サプリメントをうまく活用するとよいでしょう。
高額なサプリメントもたくさんありますが、経済的な面を考えて、「DHC アスタキサンチン 30日分 (30粒)」のような、安価でなおかつ高評価を得ている商品がおすすめです。
「糖化」を防ぐために、「AGEs」の生成を抑える。 そして、「酸化」を防ぐために、「活性酸素」の発生を抑える。 以上の2点は、アンチエイジングの基本となり、QOL(生活の質)の向上、維持においても重要な要素となります。 糖化と酸化の知識を身に付け、実際に行動するか否かで、数年後の健康状態や容姿に大きな違いが生まれてきます。 未来の自分のためにも、少しずつでも、「糖化と酸化を抑える生活」にチャレンジしてみてください。
参考
- 米井 嘉一.『最新医学が教える 最強のアンチエイジング』.日本実業出版社,2019.
- e-ヘルスネット(厚生労働省)|糖尿病を改善するための運動
- e-ヘルスネット(厚生労働省)|活性酸素と酸化ストレス