3大慢性頭痛の治し方【片頭痛・緊張型頭痛・群発頭痛の原因・特徴・予防&対処法】

街中で頭痛に苦しむOL
本記事では、3大慢性頭痛(片頭痛・緊張型頭痛・群発頭痛)を見分けるポイントや予防・対処法、頭痛の基礎知識、その他の頭痛の概要などをお伝えします。

頭痛の基礎知識

時折、私たちを悩ませる「頭痛」には、実に多くの種類が存在します。

「国際頭痛分類第3版」によれば、367種類もの頭痛があるとされています。

これら多くの頭痛は、「一次性頭痛」と「二次性頭痛」とに分けられます。

一次性頭痛

一次性頭痛とは、明らかな原因が認められない頭痛を指し、「慢性頭痛」ともよばれます。

普段、私たちが感じる「生命に関わらない頭痛」の大半はこのタイプに分類され、代表的なものとしては片頭痛・緊張型頭痛・群発頭痛などが挙げられます。

命に関わらないとはいえ、程度がひどい場合にはQOL(生活の質)を著しく低下させる原因となり、頭痛外来などでの治療が必要となるケースもあります。

二次性頭痛

一方の二次性頭痛とは、原因がはっきりしている頭痛を指します。

原因としては病気や外傷、感染症などがあります。

これまでに経験したことのない感覚や症状をともなう頭痛が発症した場合、二次性頭痛の可能性が高いといえます。

明確な原因のない一次性頭痛の場合、ある程度は自分で予防・対処することができますが、病気や外傷を原因とする二次性頭痛は生命に関わることがあるため、一刻も早い受診が必要となります。

以下で詳しくみていきましょう。

3大慢性頭痛

一次性頭痛のうち、片頭痛・緊張型頭痛・群発頭痛の3つのことを「3大慢性頭痛」といいます。

以下でそれぞれの原因や特徴をみていきましょう。

片頭痛

後述するさまざまな要因によって三叉神経の末端が刺激され、CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)という物質が脳の血管を拡張し、炎症が生じることで片頭痛が引き起こされると考えられています(諸説あります)。

片頭痛の主な特徴は次のとおりです。

  1. 片側もしくは両側のこめかみが脈打つように痛む
  2. 頭重感を感じる
  3. 動くと痛む
  4. さまざまな前兆症状がある
  5. 男女比は「1:4」と、女性に多い
  6. 遺伝性が高い

片頭痛では、こめかみ付近が「ズキズキ」と脈打つように痛むことが多いとされていますが、ときに頭が重く感じたり、締め付けられるような感覚を覚えたりすることもあります。

また、さまざまな前兆があるとされ、代表的なものには閃輝暗点(せんきあんてん)があります。

閃輝暗点とは、突然視野のなかに稲妻のようなジグザグの線や点滅する光が現れ、それが徐々に広がっていき、その部分が暗く見えなくなる、という一時的な視覚異常を指します(通常は10〜30分程度で回復します)。

くわえて、感覚症状(チクチクする)や言語症状(言葉が出ない)、脳幹症状(ろれつが回らない、めまい、耳鳴りなど)が前兆として現れることもあります。

ほかにも、吐き気や嘔吐、首や肩の急激なコリ・違和感、光や音に対する過敏性の亢進、眠気、疲労感、生あくび(眠くないのに出るあくび、かすみ目、顔面蒼白などをともなうこともあります。

片頭痛を引き起こす要因には、次のようなものがあります。

  1. ストレス・不安
  2. 自律神経の乱れ
  3. 睡眠の乱れ(睡眠不足や寝すぎ)
  4. 偏った食生活
  5. まぶしい光
  6. 強い臭い
  7. 人混み
  8. 騒音
  9. 空腹
  10. 気候や気圧の変化
  11. 女性ホルモンの変化
  12. 特定の飲食物の多量摂取

これらは、三叉神経の過度な興奮をもたらします。

先にも述べたとおり、片頭痛は三叉神経の末端が刺激される(興奮する)ことによって引き起こされます。

普段、私たちの体の中では、脳内物質のセロトニンが三叉神経の興奮を抑えています。

上記のような要因(ストレスや睡眠不足、偏った食生活など)によって許容量を超える刺激が発生すると、セロトニンが三叉神経を制御できなくなります。

その結果として、片頭痛が発症すると考えられています(完全には解明されていません)。

要因をざっと見てみると、そのほとんどに何かしらの「ストレス」が関与していることがわかると思います。

ゆえに、心身への種々のストレスは、「片頭痛の最大の要因」といっても過言ではなく、日頃のストレスマネジメント(ストレスへの対処法の確立やストレスに対する認知の変容など)が重要なポイントになるといえます。

また、ストレス意外にも、以下のような食品を多量に摂取することでも片頭痛は誘発されます

片頭痛の原因となる食品成分
成分名多く含む食品
チラミン赤ワイン
チョコレート
チーズ
ナッツ
柑橘系
ポリフェノール赤ワイン
チョコレート
オリーブ油
フェニルエチルアミン赤ワイン
チョコレート
チーズ
ヒスタミン赤ワイン
チーズ
グルタミン酸ナトリウムうま味調味料
ファストフード
アスパルテームノンカロリー飲料
亜硝酸塩(あしょうさんえん)ハム
ソーセージ
サラミ

これらの食品をとったからといって、必ずしも片頭痛が起きるとは限りませんが、摂取後に頭痛が頻発するようであれば、摂取をやめたり、摂取量を減らしたりする必要があります。

緊張型頭痛

種々の要因(後述)によって首や頭部の筋肉が収縮すると、血流の循環が滞ります。

その結果として、痛み物質である「プロスタグランジン」や、疲労物質の「乳酸」や「ピルビン酸」が発生し、緊張型頭痛が引き起こされます。

この頭痛は日本人にもっとも多い頭痛とされ、その原因の多くは「首や肩のこり」だといわれています。

緊張型頭痛の主な特徴は次のとおりです。

  1. 後頭部を中心に頭全体が締め付けられるように痛む
  2. 運動不足(長時間のデスクワークなど)が原因となる
  3. 姿勢の悪い人やストレートネック(スマホ首)の人などに頻発する
  4. 体にとって「不自然な姿勢」を長時間とった後に生じやすい
  5. 眼精疲労やドライアイ、長時間のマスクの着用などによっても生じることがある
  6. 運動をしたり、お風呂に入ったり、アルコールを飲んだりすると痛みが和らぐ
  7. 痛みが断続的に1週間程度続くことがある
  8. 頭痛意外の症状(吐き気など)はない

前述した片頭痛は、こめかみ付近が「ズキズキ」と痛むことが多いのに対し、緊張型頭痛では、後頭部を中心に頭全体が「ギューッ」と圧迫されるように痛む場合が多いとされています。

姿勢の悪い人や首こり・肩こりのある人、デスクワークの多い人(運動習慣のない人)などに頻発します。

また、イスに浅く座る、脚を組む、ハイヒールで長時間歩く、デスクにうつ伏せになる、ヒジをついて横になる、といった体に負荷のかかる「不自然な姿勢」によっても誘発されます。

群発頭痛

群発頭痛の発症機序はいまだに解明されておらず、さまざまな説が唱えられています。

たとえば、男性ホルモン上昇説や体内時計の調節障害説、ウイルス感染説、ストレス説、遺伝子説などがあります。

一方で、「痛み」のメカニズムに関しては、頚動脈管説が有力視されています。

これは、何らかの刺激によって、目の奥の内頚動脈に炎症が起き、そこに絡みついている交感神経や内頚動脈自体が頚動脈管(内頚動脈の通り道)に押し付けられて痛みが生じる、という説です。

群発頭痛の主な特徴は次のとおりです。

  1. 片方の目の奥がえぐられるように激しく痛む
  2. 必ず同じ側だけが痛む
  3. 痛みは15分〜3時間程度続く
  4. 一年のうち決まった期間(1〜2ヶ月程度)に断続的に発症する
  5. 頭痛側の顔や歯も痛む
  6. 頭痛側だけ涙や充血、鼻水、鼻詰まり、まぶたのむくみといった症状が現れる
  7. 痛すぎてじっとしていられない
  8. 睡眠時に痛みで目を覚ますことがある
  9. 飲酒や血管拡張物質によって誘発される
  10. 市販の鎮痛薬がまったく効かない
  11. 20〜30代の男性に多い

群発頭痛を発症すると、片方の目の奥が激烈に痛むようになります。

その痛みが「自殺してしまいたくなるほどの激しい痛み」であることから、俗に「自殺頭痛」とよばれています。

この頭痛は、「三叉神経・自律神経性頭痛(TACs)」という種類に分類され、顔面痛自律神経症状(涙や鼻水など)をともなうのが大きな特徴です。

群発頭痛の患者の約85%は、頭痛が起きる「群発期」と頭痛が起きない「寛解期(かんかいき)」を繰り返す反復性群発頭痛だといわれています。

群発期間は年に1〜2回程度あるとされ、発症すると1回の期間につき3〜16週間程度症状が続きます。

群発頭痛の症状の持続時間は15分〜3時間程度とされ、前述の群発期間中に繰り返し現れます。

一方、反復性群発頭痛ではない残りの約15%の人には、寛解期(頭痛が起きない期間)がありません。

このような「寛解期のない群発頭痛」のことを慢性群発頭痛といいます。

3大慢性頭痛の予防・対処法

片頭痛・緊張型頭痛・群発頭痛の発症を極力抑える方法と、実際に発症したときの対処法をみていきましょう。

片頭痛の予防・対処法

片頭痛を予防するうえで心がけるべきことは次のとおりです。

  1. ストレスをためない
  2. 強い光や臭い、人混み、騒音などを避ける
  3. 就寝時刻を固定し、適切な時間の睡眠をとる(理想は11時頃までに眠りにつき、7〜8時間程度眠ること)
  4. 空腹を避ける
  5. バランスの良い食事をとる
  6. セロトニンを増やす生活を心がける
  7. 飲酒・喫煙を避ける
  8. 無理な姿勢を継続的にとらない
  9. 外出時にはサングラスをかける
  10. 鎮痛薬を過剰に服用しない
  11. 片頭痛の原因となる食品(前述)を控える

片頭痛を抑える作用のある脳内物質の「セロトニン」は、運動や日光浴、人とのスキンシップなどによって増やすことができます。

くわえて、「トリプトファン」を多く含む食品をとることでもセロトニンを効率的に増やせます。

セロトニンの増やし方について、詳しくは以下の記事を参照してください。

関連記事:精神的につらいときの対処法:環境・思考・行動・脳内物質を最適化し、少しずつ慣れる
実際に片頭痛が起きたときに重要となるのは、拡張した血管を収縮させることです。

そのため、発作が起きたときには、後頭部意外の患部(こめかみなど)を氷のうや冷却シートなどで冷やし、拡張した血管を収縮させるようにしましょう。

また、患部を指などで軽く押圧するだけでも、ある程度は拡張した血管を収縮させることができます。

くわえて、コーヒーなどのカフェイン入りの飲食物をとったり、入浴をシャワーで済ませたり、暗くて静かな場所で眠ったりすることも効果的です。

カフェインには、血管を収縮させる作用があります。

緊張型頭痛の予防・対処法

緊張型頭痛を予防するうえで心がけるべきことは次のとおりです。

  1. 運動習慣を身に付ける
  2. 姿勢を矯正する
  3. 首や肩のこり・血流を改善する(入浴など)
  4. ストレートネックの悪化を防ぐ(極力うつむかない)
  5. 体に負荷のかかる姿勢をとらない
  6. 目を使いすぎない(眼精疲労やドライアイを予防する)
  7. ストレスをためない
  8. 規則正しい生活を送る

前述した片頭痛の予防法と同様、緊張型頭痛を予防するうえでも睡眠や食事といった生活習慣を正すことは重要ですが、さらに重要となるのが「日中の過ごし方」です。

日中の姿勢や仕事内容、運動の頻度などが緊張型頭痛の発症に大きく関与しています。

ようは、普段の姿勢が悪かったり、仕事や勉強などでじっとしている時間が長かったりすると、首や肩、目などに疲労がたまり、緊張型頭痛が発症しやすくなってしまう、ということです。

デスクワークや勉強の際、定期的に体を動かす時間(トイレ休憩など)を設けることで、ある程度は緊張型頭痛を予防することができます。

また、昼休憩のときや帰宅後、休日などには、ある程度しっかりと運動(ウォーキングなど)を行い、筋疲労と血流を改善させることも重要となります。

同様に、発症した緊張型頭痛を治すためにも、筋疲労や血流の改善が不可欠です。

具体的な方法としては、運動や入浴、ストレッチ、マッサージなどが挙げられます。

運動内容は、全身の血流を促進できる「ウォーキング」にくわえ、「首や肩の筋力トレーニング」もおすすめです(筋力がつくと血流が悪化しにくくなります)。

首はデリケートで痛めやすく、損傷すると重篤な病気(脳動脈解離など)につながるおそれもあるため、運動強度には十分注意してください。
また、首や肩のこりを改善するためには、入浴の際にしっかりと首もしくは肩までお湯につかるのが効果的です。

しかし、この入浴法は心臓や血管への負担が大きくなるため、お湯の温度をぬるめ(40℃以下)に設定し、長時間つからないようにしましょう(目安は10分以内)。

ちなみに、アルコールを飲むと血流が良くなり、一時的に緊張型頭痛が改善する場合がありますが、アルコールの体への害を考えるとおすすめできません。

緊張型頭痛の大きな要因であるストレートネックは、長時間のスマートフォン操作やPC作業、勉強などによる「うつむいた姿勢」で悪化します。

とはいえ、どれも多くの現代人にとってはなくてはならないものであり、すべてを完全に断ち切る、というのは現実的ではありません。

そこで、重要となるのが「うつむかないで済む環境」を整えることです。

たとえば、以下のようなことです。

日頃から「できるだけうつむかない!」といった意識をもち、生活に工夫を加えていくことで、首や肩への負担は大きく軽減されます。

また、先にも述べたとおり、仕事や勉強でデスクに向かいっぱなし、という人は、定期的(30分おきくらい)に立ち上がったり、少し歩いたりすることで、緊張型頭痛を未然に防ぐことができますが、このことは、首・肩こりやストレートネックの悪化を防ぐうえでも有効です。

なお、前述した「片頭痛」と「緊張型頭痛」の対処法は真逆であるため、頭痛の鑑別は慎重に行う必要があります

群発頭痛の予防・対処法

群発頭痛を予防するうえで心がけるべきことは次のとおりです。

  1. 群発期には飲酒・喫煙をしない
  2. 血管を拡張させる行為を控える(高温のお風呂やサウナ、激しい運動、辛い食品の摂取など)
  3. 規則正しい生活を送る
  4. しっかりと睡眠をとる(就寝時刻を固定し、7〜8時間程度眠る)
  5. 長時間の昼寝をしない
  6. 気圧が変化する環境を避ける(飛行機への搭乗や登山、スキューバダイビングなど)

群発頭痛は何らかの要因によって、脳内の血管が過剰に膨張することで引き起こされます。

そのため、群発頭痛への対処法として重要となるのが、血管の膨張を抑制することです。

具体的には、心拍数が上がったり、汗をかいたりするような行動は極力避け、「安静」を心がけるようにしてください。

血管を拡張させる「飲酒」がNGなのはいうまでもありませんが、「喫煙」も控えるべきです。

というのも、群発頭痛の患者には喫煙者が多く、何かしらの因果関係がある、と考えられているからです。

くわえて、「睡眠の乱れ」も群発期頭痛を悪化させる要因となります。

そのため、就寝時刻を一定にしたり、長時間の昼寝を控えたりし、睡眠の質の悪化を防ぎましょう。

とはいえ、群発期には痛みで目が覚めてしまうことも多く、良質な睡眠を確保するのが難しくなる場合があります。

そのため、群発期に限り、睡眠中に目を覚ましてしまうことを考慮し、いつもより30分ほど早く布団に入るのをおすすめします。

群発頭痛は痛みが激しいうえに、市販の鎮痛薬が効きません

さらには、ほかの一次性頭痛と比べて予防や対処が難しいこともあり、群発頭痛の患者は心身ともに疲弊しがちです。

そのため、「片方の目の奥が激しく痛む」「涙や鼻水が出る」といった群発頭痛特有の症状が現れた場合は、できるだけ早く専門機関(頭痛外来など)を受診し、医師の指導のもと適切に対処していくことをおすすめします。

その他の頭痛

後頭神経痛

近年では、スマートフォンやテレワークの普及により、「第4の頭痛」といわれている「後頭神経痛」の患者が急増しています。

この頭痛は、その名のとおり「神経痛」に分類されます。

後頭神経痛は、痛む部位(障害されている神経)の違いにより、「大後頭神経痛」「小後頭神経痛」「大耳介神経痛」の3つに分けられます。

後頭神経痛のうち、およそ9割が大後頭神経痛とされ、残りのほとんどが小後頭神経痛だといわれています(大耳介神経痛は比較的まれとされています)。

後頭神経痛の主な特徴は次のとおりです。

  1. 片側の首から後頭部・頭頂部の頭皮にかけてチクチク・ピリピリと激痛が走る
  2. 痛みは一瞬もしくは1分程度で消失する
  3. 髪の毛に触れたり、クシでとかしたりするだけで激痛を感じる
  4. 首や肩がこっている人、姿勢の悪い人、ストレートネックの人などに頻発する
  5. 痛みが断続的に1週間程度続くことが多い
  6. 頭痛用の鎮痛薬がまったく効かない(神経痛のため)
  7. 雨が降る前日に痛みが悪化する(雨が降ると治まる)
  8. 首を動かすと痛むことがある
  9. ストレスや加齢にともなう背骨の変形などが原因となることもある

緊張型頭痛と同様、後頭神経痛も首・肩のこりや姿勢不良、ストレートネックなどが誘因のひとつとされています。

そのため、病院で緊張型頭痛と診断されたが、実は後頭神経痛だった、というケースもあるようです。

とはいえ、緊張型頭痛と後頭神経痛の痛み方はまったくの別物なので、鑑別はさほど難しくありません。

緊張型頭痛は、ハチマキを締められたように横方向に頭全体が痛むのが特徴ですが、後頭神経痛は、後頭部から頭頂部に向かって縦方向に痛みが動くような感覚があります。

ほかにも、類似疾患として「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」が挙げられます。

後頭神経痛と同様、帯状疱疹も体の片側に発症し、神経痛を引き起こします。

ただし、帯状疱疹は「湿疹」をともなうケースがほとんどです。

そのため、頭部の見た目に異常がない場合は脳神経内科や内科を、頭部に水ぶくれがあるようならば皮膚科を受診するとよいでしょう。

後頭神経痛の痛みに対する応急処置として、痛む部位を強めに5秒ほど押圧して離す、というのを数回繰り返す方法があります。

くわえて、患部を短時間冷やすのも効果的です(長時間冷やすと、筋肉のこりの原因となるので注意してください)。

これらの処置には神経の興奮を抑える作用があり、痛みの緩和が期待できます。

薬物乱用頭痛(MOH)

薬物乱用頭痛(MOH:Medication overuse headaches)は、いずれかの一次性頭痛(慢性頭痛)を持っている人が、鎮痛薬を3ヶ月以上に渡って乱用することで生じます。

「乱用」の基準は薬によって異なり、1ヶ月のうち10日もしくは15日以上服用している状態を指します。

MOHの主な特徴は次のとおりです。

  1. 片頭痛と緊張型頭痛が混在したような症状が月に15日以上続く
  2. 締め付けられるような痛みや頭重感がある
  3. 痛む部位が変わる
  4. 明け方や起床時に症状が現れやすい
  5. 頻繁に鎮痛薬を服用している人に頻発する

頭痛に限らず、歯痛や腰痛、生理痛といった種々の痛みに対して、頻繁に鎮痛薬を用いている場合、MOHに陥りやすいといえます。

ゆえに、MOHを予防するためには、鎮痛薬に頼りすぎないことが肝要です。

片頭痛や緊張型頭痛が現れた際は、まずは前述したような対処法を試し、それでも治まらない場合にのみ薬を服用するとよいでしょう。

また、当然ながら、MOHを発症した際に必要なことも、鎮痛薬を服用しない、ということです。

日頃から過度に鎮痛薬に頼っていた人にとって、減薬や断薬は勇気のいる決断となるかもしれません。

しかし、MOHを治すためには避けては通れない道なので、少しずつでも服用量を減らしていきましょう(いうまでもなく、医師に処方された「必要な薬」はしっかりと服用してください)。

なお、一般的に、MOHから離脱するには困難を要するとされ、専門医による治療においても20%程度しか達成できない、との報告もあります。

そのため、できるだけ頭痛専門医の指導を受け、焦らずにじっくりと治療を続けていくことが重要となります。

一次性運動時頭痛

一次性運動時頭痛(通称:ウエイトリフター頭痛)とは、激しい運動の最中もしくは運動後に起きる拍動性頭痛です。

ズキズキとした痛みが数分〜48時間程度続き、自然に治まるのが特徴です。

気温が高いときや、高所での運動時に頻発します。

予防法としては、運動強度を75%以下に下げるのが有効です。

適切な運動強度を維持することは、頭痛のみならず、体をケガや酸化から守ることにもつながります。

そのため、運動時にはくれぐれも頑張りすぎないようにしてください。

なお、一次性運動時頭痛が発症した場合は、運動を中断し、しばらくの期間は安静を心がけてください。

ポニーテール頭痛

ポニーテール頭痛(正式名称:頭蓋外からの牽引による頭痛)とは、ポニーテールやお団子ヘアといった、「引っ張って束ねる髪型」をしている人に起きる頭痛です。

頭皮が引っ張られた状態が続くと、血流の悪化や筋肉の緊張、神経の圧迫などを招き、その結果として頭痛が発症します。

予防法としては、髪を下ろすのがベストですが、結び目の位置を低くしたり、緩めに結んだりするのも有効です。

この頭痛が起きた際は、髪を下ろすことで自然と痛みは消えていきます。

アイスクリーム頭痛

アイスクリームやかき氷といった、極端に冷たい飲食物を摂取した際に起きるのが「アイスクリーム頭痛」です。

発症メカニズムとしては、以下の2つが有力視されています。

  1. 冷たいものが喉を通るときに三叉神経が刺激され、その際に生じた伝達信号を脳が「痛み」と勘違いして引き起こされる
  2. 冷たい飲食物によって急激に冷やされた喉や口の中を温めるために、頭につながる血管が膨張して引き起こされる

痛みは数分以内に消失します。

予防法としては、冷たいものは少しずつ摂取する、冷たいものと温かいものを交互にとる、などがあります。

病院へ行くべき頭痛

病院で治療を受けるべき頭痛は次のとおりです。

  1. 症状が強い一次性頭痛
  2. 二次性頭痛

一次性頭痛(片頭痛や緊張型頭痛など)は自然と治ることも多いため、発症してもわざわざ病院に行かない、という人も多いのではないでしょうか。

病院へ行かずとも、時間の経過とともに自然と治るのであればそれで問題はありません。

しかしながら、痛みの強さや頻度が増加し、生活に支障が出てきた場合は、できるだけ早めに頭痛外来などで診てもらうことをおすすめします。

一方の病気や外傷、感染症などが原因となる「二次性頭痛」は、生命に関わる場合も多いため、発症後は速やかに医療機関を受診しましょう(緊急性が高い場合は、救急車を利用しましょう)。

また、受診の遅れを防ぐためには、二次性頭痛の「原因疾患」を正しく理解することも重要となります。

以下では、二次性頭痛の原因疾患とそれぞれの特徴をみていきます。

くも膜下出血

くも膜下出血は、二次性頭痛をもたらす病気の代表格であり、とくに50歳以上の人が注意すべき病気です。

脳は三層の膜(髄膜)によって覆われています。

外側から順に「硬膜・くも膜・軟膜」という3つの層を形成し、そのうち、くも膜と軟膜の間には、「くも膜下腔」といわれる領域があります。

この部位で動脈が破裂し、血液がくも膜下腔に流れ込んだ状態を「くも膜下出血」といいます。

その大半は、脳動脈にできたこぶ(脳動脈瘤)が破裂することで生じます。

発症するとバットで殴られたような激しい頭痛を感じ、嘔吐、けいれん、意識障害などを引き起こします。

早期に治療をしないと約半数が死に至ります。

脳腫瘍

脳腫瘍とは、頭蓋骨の中にできる腫瘍の総称です。

脳腫瘍が大きくなるにつれて、前述した髄膜(脳を覆っている膜)が圧迫されていきます。

その結果、髄膜に痛み刺激が発生し、その痛みが頭痛として感知されるようになります(脳には痛覚がないため、脳腫瘍自体が痛むことはありません)。

痛み方は前述したくも膜下出血とは異なり、鈍痛が少しずつ悪化していくのが特徴です(緊張型頭痛と似た痛みが生じます)。

また、起きているときよりも、寝ているときのほうが痛みを感じやすいのも特徴です。

その理由としては、横になった際、重力によって脳内の血流量が増えることが挙げられます。

また、頭痛意外の症状には、嘔吐や視力障害、片マヒやしびれ、言語障害などがあります。

脳腫瘍は、ある程度進行しないと目立った自覚症状が現れないことが多いため、定期的に「脳ドック」を受けるなどし、早期発見に努める必要があります。

慢性硬膜下血腫

慢性硬膜下血腫とは、頭部への軽度の打撲などをきっかけに、脳を覆っている硬膜とくも膜の間(硬膜下腔)にじわじわと(2週間〜3ヶ月程度かけて)血液がたまっていき、血腫(けっしゅ)が形成される病気です。

血腫とは、血管から出血した血液が体外に排出されず、組織内に溜まっている状態を指します。

慢性硬膜下血腫を発症すると、頭痛や認知症症状(物忘れなど)、失禁、片マヒ、ふらつきなどの症状が現れることがあります。

前述したとおり、およそ2週間から3ヶ月をかけて少しずつ進行する病気なので、たとえ頭部の負傷直後に異常を感じなくても、必ず医療機関に行って検査を受けることが重要となります。

脳動脈解離

動脈は内側から内膜、中膜、外膜の3層構造をしています。

もっとも内側の内膜が何らかの原因によって傷ついて出血し、そこから血管が裂けていく病気を「動脈解離(どうみゃくかいり)」といいます。

動脈解離は全身の動脈で起こり得ますが、脳内の血管で起きたものを「脳動脈解離」といいます

脳動脈解離を発症すると、多くの場合は首の後ろから後頭部にかけて激痛を感じるようになります。

原因としては、首の激しい運動や首への強い圧力(無理なマッサージなど)がありますが、はっきりした原因がなく発症することもあります。

血管の損傷が少なく、発症直後に適切な治療を受ければ重症化することを避けられます。

脳動脈解離は、重症化すると前述した「くも膜下出血」や「脳梗塞(脳の動脈が詰まり、脳が壊死する病気)」などの重篤な病気につながるおそれがあります。

ちなみに、「脳梗塞」を発症しても頭痛が起きることはほとんどないといわれています。

脳出血

脳出血とは、脳内の細かい動脈が何らかの原因によって破れ、脳実質内に血液が流出する病気です。

脳実質とは、脳そのもの(大脳・小脳・脳幹など)を指します。

前述した慢性硬膜下血腫と同様、脳出血も「血腫(血の塊)」を形成し、脳を圧迫するようになります。

脳出血を発症すると、多くの場合は激しい頭痛を感じます。

くわえて、吐き気やめまい、意識障害、片マヒ、言語障害などが現れることもあります。

脳出血の原因の大半は「高血圧」とされていますが、脳腫瘍からの出血やほかの疾患の影響、薬剤の影響、脳血管の奇形などによっても引き起こされます。

髄膜炎・脳炎

髄膜炎は脳を覆っている「髄膜」に炎症が起きる病気です。

一方の脳炎は「脳自体」に炎症が起きる病気です。

ときには、両者を合わせた「髄膜脳炎」がみられることもあります。

これらはウイルスや結核、真菌(カビ)への感染や、自己免疫疾患によって発症します。

症状は髄膜炎・脳炎の種類(原因)によって異なりますが、その多くに共通する症状としては頭痛や発熱、嘔吐、首の硬直、意識障害などが挙げられます。

髄膜炎・脳炎ともに、重症化すると生命に関わるため、迅速な治療が求められます。

急性緑内障発作

急性緑内障発作とは、何らかの原因によって「閉塞隅角緑内障(へいそくぐうかくりょくないしょう)」を発症し、眼圧の急上昇、眼痛、頭痛、吐き気、嘔吐、かすみ目などの症状が現れる目の病気です。

閉塞隅角緑内障とは、目の「隅角」という「目の内部を栄養する水(房水)が排出される部位」の閉塞が原因となって起きる緑内障のことで、慢性と急性とに分けられます。

失明につながるおそれもあるため、早急な治療が必要となります。

既におわかりのとおり、二次性頭痛の原因となるのは脳疾患だけではないため、結局のところは全身の健康が必要、ということになります。

熱中症

熱中症とは、屋内外を問わず、高温多湿な環境に長時間いることで、体温の調節機能がうまく働かなくなり、体に熱がこもる機能障害を指します。

熱中症の重症度には、Ⅰ度(軽度)・Ⅱ度(中等度)・Ⅲ度(重度)の3段階があり、Ⅱ度(中等度)で頭痛が起きるとされています。

Ⅱ度(中等度)は病院への搬送が必要なレベルとされているため、暑い環境下で頭痛が起きた場合は、早急に医療機関へ行きましょう。

頭痛のみならず、吐き気・嘔吐・下痢・倦怠感・虚脱感・失神・気分の不快・判断力や集中力の低下などもⅡ度(中等度)の症状とされているため、これらが現れた際にも、必ず受診をするようにしてください。

Ⅰ度(軽度)の症状(めまいなど)が現れた場合は、涼しい場所で安静にしましょう。

その際は、経口補水液やスポーツドリンクなどで水分補給をし、氷のうなどを首の付け根や脇の下、鼠径部(股関節)に当て、体温を下げてください(体調が悪化するようであれば病院へ行きましょう)。

ちなみに、入院・集中治療の必要性が高いⅢ度(重度)の症状には、意識障害・けいれん・手足の運動障害・おかしな言動や行動・過呼吸・ショック症状などがあります。


街中で書類を持ちながら微笑むOL
一次性頭痛(慢性頭痛)は、眼精疲労や肩こり、疲労感などと並んで、現代人が抱える不調の代表的な存在です。

ゆえに、頭痛を予防し、頭痛に適切に対処することが、QOL(生活の質)を向上させるうえで不可欠となります。

また、病気や外傷によって発症する二次性頭痛は「激しい痛み」をともなうものが多いですが、原因の種類や程度によっては、一次性頭痛(緊張型頭痛など)と同様の痛みであることも少なくありません。

そのため、軽度の頭痛であっても油断は禁物です。

本記事でお伝えしてきたような予防・対処法で「一次性頭痛」の発症と悪化を防ぎ、くわえて、人間ドックや脳ドックなどの検診を定期的(目安としては、人間ドックは年1回、脳ドックは2〜3年おき)に受け、「二次性頭痛」を予防していきましょう。
参考