万病のもと「慢性炎症」の原因・予防法・関連疾患【肥満・糖化・酸化を抑えることが最重要】

デスクで胸の痛みに苦しむ女性
本記事では、慢性炎症の原因や予防法、関連する疾患、炎症の基礎知識などをお伝えします。

炎症とは

さまざまな要因によって、比較的頻回に生じやすい体の反応として、「炎症」が挙げられます。

これには、ケガや病気、虫刺され、筋肉痛、日焼けといった、大小さまざまなものが存在します。

炎症は物理的刺激や化学的刺激(薬品接触など)、熱刺激、感染症などによって引き起こされ、特有の症状をもたらします。

炎症の症状

炎症の典型的な症状には、以下の4つがあります。

  1. 発赤
  2. 熱感
  3. 腫脹
  4. 疼痛

これらは、「炎症の4徴候(ケルススの4徴候)」とよばれます(ちなみに、炎症の4徴候に「機能障害」を加えたものを「炎症の5徴候(ガレノスの5徴候)」といいます)。

その他の症状としては、「かゆみ」や「違和感」などが挙げられます。

急性炎症(後述)で顕著にみられるこれらの症状は、体内の異物(細菌やウイルス、死んだ自分の細胞など)を排除するために必要となる「正常な防御反応」です。

炎症の検査方法

体が炎症しているかどうかは、血液検査でCRP値を調べるとわかります(一部の特殊な細菌や微生物が原因の炎症は測定できません)。

ただし、弱い炎症を症状とする慢性炎症の場合は、炎症の基準値を下回ってしまうことがあります。

そういった場合は、「高感度CRP検査」を受けることをおすすめします。

この検査では、微量なCRPを測定することができるため、今まで見過ごされてきた小さな炎症を発見できる可能性があります。

急性炎症と慢性炎症

炎症には、「急性炎症」と「慢性炎症」の2種類があります。

急性炎症は、突発的なケガや病気などで生じ、比較的早い段階で前述したような炎症症状が現れます。

このタイプの炎症は、治療期間を経て、患部が十分に回復すれば自然と引いていきます。

一方の慢性炎症では、必ずしも急性炎症のような症状(赤みや痛み)が現れるとは限らず、知らず知らずのうちに進行していることも多くあります。

炎症を「火」にたとえるならば、急性炎症は短時間のうちに派手に燃え、放水(治療や免疫細胞のはたらき)によって比較的早く鎮火される炎であるのに対し、慢性炎症は長い間くすぶり続ける「ボヤ」のようなものです。

ボヤと聞くと「大したことないのでは?」と思われるかもしれませんが、この小さな火種を放っておくと、後々大火事(命に関わる病気)に発展する可能性があり、気づいたときには手遅れだった、ということも十分に起こり得る恐ろしい炎症です。

ゆえに、慢性炎症を予防・改善することは、健康を維持するうえで必須といえます。

以下で詳しくみていきましょう。

炎症の仕組み

炎症が起きる大まかな流れは次のとおりです。

  1. ケガや病気によって体内に異物が侵入(発生)する
  2. 血管が拡張し、血流量が増加する
  3. 血管壁が緩み、白血球が組織に流れ込む(これを「炎症細胞浸潤」という)
  4. 白血球が異物を排除する

私たちの体(皮下組織)には、異物を監視する以下の3つの細胞が存在しています。

  1. マクロファージ
  2. 樹状細胞
  3. マスト細胞(肥満細胞)

体内に異物が侵入したり、ダメージを受けた細胞が発生したりすると、上記の3つの細胞から炎症を引き起こすためのさまざま物質(連絡物質)がつくられます。

代表的な連絡物質は次のとおりです。

  1. 炎症性サイトカイン(IL-1やIL-6、TNF-αなど)
  2. ケモカイン(IL-8)
  3. 脂質メディエーター(PGやLT、PAFなど)

炎症性サイトカイン脂質メディエーターには、血管を拡張させたり、血管の細胞と細胞の隙間を広げたりして、白血球が患部に行きやすくする作用があります。

ケモカインには、白血球を炎症部位に呼び寄せる作用があります。

これらの物質のはたらきにより、白血球などの生体防御に必要な細胞(免疫細胞)や物質が患部に送り込まれ、異物との戦いが始まります。

ちなみに、白血球の一種である好中球・単球・好酸球やマクロファージ、未熟樹状細胞(初期の樹状細胞)には、異物を食べて消化・殺菌する能力「食作用(貪食作用(どんしょくさよう))」があります(これらの細胞のことを「食細胞(貪食細胞)」といいます)。

異物を排除するために白血球やマクロファージといった「免疫細胞」がはたらき始めると同時に、発痛物質(ブラジキニンやヒスタミンなど)がつくられ、組織が痛むようになります。

この「痛み」には、行動を制限して組織の回復を促す作用があることから、ヒトを含む動物が正常な身体機能を維持するうえで必須の感覚だといえます。

ちなみに、負傷した部位にできる「うみ」や風邪の治癒過程で生じる「たん」には、白血球や細菌、ウイルスなどの死骸が含まれています。

慢性炎症が引き起こす病気

全身のあらゆる部位に発症する慢性炎症は、さまざまな病気に発展する可能性があります。

慢性炎症の関与が示唆されている主な病気は次のとおりです。

  1. がん
  2. 糖尿病
  3. 脂質異常症
  4. 心筋梗塞・脳梗塞
  5. 肝炎・肝硬変
  6. 多発性硬化症
  7. クローン病
  8. 潰瘍性大腸炎
  9. 喘息
  10. 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
  11. 特発性肺線維症(IPF)
  12. 関節リウマチ
  13. アトピー性皮膚炎
  14. うつ病
  15. 認知症・アルツハイマー病
  16. 老化

慢性炎症は、これらの病気に関与している可能性があります。

ただし、注意していただきたいのは、病気はさまざまな要因が複合的に作用しあって発症するケースがほとんどだということです。

したがって、慢性炎症さえ抑えることができれば病気が治る(病気にかからない)、といった簡単な話ではないということです。

慢性炎症の原因

炎症が数週間から数ヶ月、もしくはそれ以上続く「慢性炎症」ですが、なぜ炎症が長引いてしまうのでしょうか。

免疫学の第一人者である宮坂昌之教授によれば、慢性炎症の原因としては、以下の2つが考えられるとのことです。

  1. 炎症のアクセルが踏み込まれすぎている
  2. 炎症を止めるブレーキが効きにくくなっている

アクセルが過度に踏み込まれる要因としては、免疫細胞が異物の排除に手間取っている、もしくは何らかの原因によって炎症性サイトカインに異常をきたしている、などが考えられます。

一方のブレーキが効きにくくなる、とは具体的にどのようなことでしょうか。

炎症を引き起こす物質(炎症性サイトカイン)がある一方で、炎症を抑制する物質(抗炎症性サイトカイン)も存在します。

これには、IL-10やTGF-βなどがあり、主に「制御性T細胞」や「M2マクロファージ」などからつくられます。

これらが減少することで、炎症のブレーキが効きにくくなるわけです。

肥満の進行とともに、制御性T細胞やM2マクロファージが減り、一方の炎症性サイトカインは増える、ということが確認されているため、日頃の食事や運動習慣などが炎症の慢性化に大きく関与していることは明白です。

慢性炎症の主な要因は次のとおりです。

  1. 悪い生活習慣(肥満・糖化・酸化)
  2. 老化

悪い生活習慣

悪い生活習慣は、慢性炎症の発症リスクを高める最大の要因です。

具体的には、以下のようなものが挙げられます。

  1. 糖質過多の食事
  2. 酸化を招く生活
  3. 悪い脂質のとりすぎ(良い脂質の不足)
  4. 運動不足
  5. 激しすぎる運動
  6. 睡眠不足または寝すぎ
  7. 飲酒・喫煙
  8. 過度なストレス

上記の生活習慣は、肥満・糖化・酸化のいずれかを引き起こす要因となります。

肥満だけでなく、体の「糖化」や「酸化」も慢性炎症の原因となります

老化

私たちの細胞は、日々分裂を繰り返しています。

ただし、その回数には限度があり、分裂の限界に達した細胞のことを「老化細胞」といいます(細胞が分裂を停止し、増殖できなくなった状態のことを「細胞老化」といいます)。

この老化細胞の周りには、炎症を促す物質が多く分泌されます。

そのため、老化とともに体内の老化細胞が増えると、慢性炎症が起きやすくなる、といえます。

「老化は抑えようがない」と思われるかもしれませんが、近年、老化は体の糖化や酸化がもたらす病気の一種だとする見方もされるようになってきています。

慢性炎症の予防法

慢性炎症を予防するうえでもっとも重要となるのは、前述の「悪い生活習慣」を改め、「良い習慣」を身に付けることです。

具体的には、以下のようなことを心がけるとよいでしょう。

  1. 糖質は控えめに摂取する
  2. 体内の脂質バランスを整える
  3. 抗炎症・抗酸化力の高い食品を摂取する
  4. 禁酒・禁煙をする
  5. ゆっくりと食事をする(よく噛んで食べる)
  6. 腹八分目を心がける
  7. 長めの空腹時間を設ける(1日2食にする)
  8. 有酸素運動と筋力トレーニングをする
  9. 腸内環境を整える
  10. 口腔ケアを徹底する
  11. 日光浴をする
  12. 就寝時間を固定し、7〜8時間程度眠る
  13. ストレスをため込まない

これらは、肥満や糖化・酸化(=老化)を抑制し、慢性炎症の予防につながる行動といえます。

それぞれ詳しくみていきましょう。

糖質は控えめに摂取する

いうまでもなく、過度な糖質の摂取は肥満につながります。

前述したとおり、肥満になると炎症性サイトカインが増え、抗炎症性サイトカインが減ります(炎症しやすくなります)。

くわえて、糖質および肥満の状態は、AGEs(糖化の原因)や活性酸素(酸化の原因)を増やす要因にもなります。

以上のような理由から、甘い飲食物やごはん、いも類、果物などに多く含まれる糖質の摂取量を制限することは、慢性炎症を予防するうえでもっとも重要なことだといえるでしょう。

ただし、注意点としては、過度の糖質制限は、低血糖症や体臭・口臭の悪化などを招くおそれがあるため、最低限必要な量は摂取するようにしましょう。

1食あたりの適切な摂取量の目安としては、ごはんなら茶碗に軽く1杯、パンは8枚切りで1枚以内です。

これまでに糖質を多くとっていた人にとっては物足りない量だと思いますが、慣れるまでの辛抱です。

強い空腹感を感じる場合は、多めの野菜(糖質が少ない野菜)をとるなどして、お腹を満たすようにするとよいでしょう。

また、摂取量を減らすだけでなく、食品の種類を変えるのも有効です。

たとえば、ごはんを玄米や雑穀米に変える、パンを全粒粉パンやライ麦パンに変える、といった具合です。

玄米や雑穀米、全粒粉パン、ライ麦パンなどは「低GI食品」とよばれ、一般的に食べられている精白米や食パンと比べて、食後に血糖値が上がりづらい性質があります。

そのため、糖質の量を減らすことにくわえ、低GI食品を食事にうまく取り入れることも慢性炎症や肥満を予防するうえで効果的です。

体内の脂質バランスを整える

体内の脂質バランスは、炎症のしやすさに直結する要素です。

具体的には、オメガ6脂肪酸が多いと炎症を起こしやすく、オメガ3脂肪酸が多いと炎症を抑制しやすくなります。

オメガ6脂肪酸は牛肉や豚肉、バターなどの動物性脂肪や、多くの食用油(サラダ油など)に多く含まれているため、現代人は過剰に摂取しがちです。

一方のオメガ3脂肪酸は、青魚やえごま油、アマニ油などに含まれ、現代人の多くは不足しがちな栄養素です。

ちなみに、「オメガ6:オメガ3」のベストなバランスは、「4:1」だといわれています。

関連記事:体に良い油「オメガ3脂肪酸」のはたらき【α-リノレン酸・EPA・DHAの効果と摂取方法】

抗炎症・抗酸化力の高い食品を摂取する

糖質の摂取量を抑えることにくわえて、炎症や酸化を抑制する食品をとることも重要となります。

抗炎症・抗酸化力に優れた成分には、次のようなものがあります。

  1. ビタミンA
  2. ビタミンC
  3. ビタミンD
  4. ビタミンE
  5. ポリフェノール
  6. カロテノイド

俗に「ビタミンエース」とよばれるビタミンA・C・Eは、抗炎症・抗酸化力に優れ、健康や美容にとって欠かせない存在です。

骨の形成やメンタルの安定に役立つビタミンDは、抗炎症作用にも優れています。

ポリフェノールは、ほとんどの植物に含まれる色素や苦味の成分で、5000種類以上あるとされています。

この成分も抗炎症・抗酸化作用に優れており、そのなかでもフラボノイドは、優れた炎症抑制作用を発揮します。

フラボノイドのなかで、もっとも強力な抗炎症力を持つのが「ケルセチン」です。

ケルセチンは、たまねぎに多く含まれています(とくに皮の部分)。

ある研究によると、1日に50mgのケルセチンをとることで、炎症や老化を抑制できる可能性がある、とされています。

この量をたまねぎ本体からとるには、中くらいのたまねぎを丸々2個食べる必要が出てきます。

一方、「皮の粉末」であれば、わずか小さじ1杯で足りるとされています。

ネットショップ等で、たまねぎの皮の粉末が売られているので、うまく活用してみるのもよいでしょう。

ほかには、コーヒーに含まれているクロロゲン酸や、お茶に含まれているカテキンやタンニン、しょうがに含まれているジンゲロールなども炎症に有効とされています。

カロテノイドとは、緑黄色野菜や果物、海藻類、甲殻類などに多く含まれる、黄色や赤色の天然色素です。

750種類以上あり、その多くが抗酸化力に優れています。

「抗酸化成分」について、詳しくは以下の記事を参照してください。

関連記事:シワ・たるみの原因と対策:体の糖化と酸化を防ぎつつ、内と外から肌のコラーゲンを増やす

禁酒・禁煙をする

飲酒と喫煙は体の糖化と酸化を促進し、慢性炎症の原因となります。

また、多量のアルコール摂取は「肝脂肪」を招きます。

肝臓についた脂肪は慢性炎症を引き起こし、次第に肝臓が傷ついていきます。

その結果、肝炎や肝臓がんを招くこともあります。

ゆっくりと食事をする(よく噛んで食べる)

ゆっくり食べることのメリットは次のとおりです。

  1. 満腹感の向上
  2. 糖化の予防
  3. 内臓脂肪の分解促進(脳内物質のはたらきによる)
  4. 消化の改善(唾液の分泌量増加による)
  5. 脳の活性化(咀嚼が脳を刺激する)

私たちの体は、食事をし始めて「満腹」と感じるまでに、20分以上かかるとされています。

そのため、最低でも20分はかけて食事をするのが望ましいでしょう。

ただ食事の時間を長くするのではなく、「多く噛む」ということを意識すれば、さらに満腹感を得やすくなります

やわらかい食品ばかりだと噛む回数が減ってしまうため、ある程度硬さのあるものを食べましょう。

また、「早食い」は血糖値の急上昇を招き、糖化の原因となるため、よく噛んでゆっくりと食事をすることは、糖化を予防するうえでも重要となります。

あまり知られていないことですが、よく噛んで食べることには、内臓脂肪の分解を促進する作用があります

しっかり噛むことで咀嚼中枢が興奮した結果、「神経ヒスタミン」がたくさんつくられます。

神経ヒスタミンには、交感神経を刺激し、内臓脂肪の燃焼を促進させる作用があるほか、満腹感を感じさせる効果もあります。

腹八分目を心がける

食事内容にくわえ、食事量も重要となります。

いくら食品を厳選し、ゆっくり食べたとしても、量が多すぎれば意味がありません。

「満腹感は遅れてやってくるもの」という認識をもち、食べ過ぎ(おかわり)を控えるようにしましょう。

長めの空腹時間を設ける(1日2食にする)

ヒトの体は、飢餓状態になることで、長寿遺伝子または長生き遺伝子などとよばれる「サーチュイン遺伝子」が活性化します。

この遺伝子には、若さと健康を保つはたらきがあるほか、炎症を抑制する作用もあります

また、サーチュイン遺伝子が活性化すると「オートファジー(自己貪食)」という仕組みもはたらき始めます。

これは、細胞が持つ「自らの細胞内のたんぱく質を分解する仕組み」の総称です。

オートファジーがはたらくことで、細胞内に異常なたんぱく質が蓄積するのを防いだり、栄養環境が悪化した際にたんぱく質を再利用したり、細胞質内に侵入した病原微生物を排除したりすることができます。

調べた限りでは、サーチュイン遺伝子を活性化させるためには、16時間程度の空腹時間を設けるのがよさそうです(諸説あります)。

そうなると、1日3食では、うち2回の食事はかなり短い間隔でとることになり、胃腸への負担が増加してしまうため、1日2食にすることをおすすめします。

食事のタイミングとしては、さまざまなパターンが考えられますが、朝食は体内リズムをリセットするのに必要、夜遅くに食事をとると睡眠の質の低下や脂肪の蓄積を招く、ということを考慮すると、朝と夕方に食事をするのが理想だといえます。

ちなみに、サーチュイン遺伝子は、飢餓のほかに「カロリー制限」や「軽い運動」などでも増やすことができます。

有酸素運動と筋力トレーニングをする

糖質の摂取量を減らすとともに、消費量を増やすことも重要です。

毎日適度に動き、その日にとった分の糖質をしっかりと消費するようにしましょう(掃除などもしっかりと行えば、かなりの運動になります)。

くわえて、有酸素運動を生活に取り入れ、蓄積した脂肪を落としたり、筋力をつけて基礎代謝を上げたりすることも慢性炎症を予防するうえで有効です。

注意点としては、激しすぎる運動はしない、ということが挙げられます。

呼吸が激しく乱れる運動(無酸素運動)は、脂肪燃焼効果に乏しいばかりか、体の酸化を促進する要因にもなり得ます。

軽く汗ばむ程度の有酸素運動をすることで、効率的に脂肪を燃やすことができます。

ウォーキングなら、20〜60分程度行えば十分です。

また、できれば有酸素運動だけでなく、軽い筋力トレーニングもするようにしましょう。

というのも、筋肉が収縮するときに骨格筋から放出される「マイオカイン」という物質には、炎症を抑制する作用があるからです。

マイオカインを効率的に分泌させるには、太ももなどの「大きな筋肉」を鍛えることが有効とされています。

とはいえ、ウォーキングなどの軽い運動でもある程度のマイオカインは放出されるので、これまで運動習慣のなかった人は、とりあえずはウォーキングを習慣化し、慣れてきたら筋力トレーニングを検討してみることをおすすめします。

腸内環境を整える

腸内環境の悪化は、体の炎症や糖化、酸化を招きます。

発酵食品や野菜、果物、豆類、海藻類などには、腸内環境を整える微生物(プロバイオティクス)や、その微生物のエサとなる食品成分(プバイオティクス)、抗炎症・抗酸化作用のある植物由来の化学物質(フィトケミカル)などが含まれています。

毎日これらを摂取することで、腸内環境の悪化を予防する効果が期待できます。

また、睡眠や運動の不足は腸内環境を悪化させる要因となるため、これらを見直すことも求められます。

関連記事:健康と美容のカギを握る「腸」【腸内環境の整え方】

口腔ケアを徹底する

歯周病の原因菌が血管内に侵入すると、全身にさまざまな疾患を引き起こすおそれがあります。

たとえば、脳梗塞や動脈硬化、糖尿病、骨粗しょう症、誤嚥性肺炎、早産・低体重児出産・肥満などと深く関与しているとされています。

日頃から歯磨きやフロスなどを徹底し、口腔トラブルを予防しましょう。

また、定期的(3ヶ月や半年おき)に歯医者で検診やクリーニングを受けることも重要です。

日光浴をする

日光浴には、抗炎症作用のある「ビタミンD」を生成する作用があります。

くわえて、抗炎症作用のある「メラトニン」というホルモンの材料となる「セロトニン」の分泌を促す効果もあります。

1日あたり、10〜20分ほどの日光浴で十分に効果が得られるとされています(長時間の日光浴は、光老化や皮膚がんの原因となるので注意しましょう)。

日光浴の際、何もしないのはもったいないので、同時に軽い運動をすることをおすすめします(運動にも「セロトニン」の分泌を促進する効果があります)。

就寝時間を固定し、7〜8時間程度眠る

抗炎症作用のあるメラトニンは、「眠りを誘うホルモン」としても機能します。

そのため、「夜にしっかりと眠たくなる=メラトニンが十分に分泌されている」と判断することができます。

メラトニンを十分に分泌させるためには、就寝時間を固定したり、朝日を浴びたり、朝食を食べたりして、体内時計を毎朝リセットする必要があります。

睡眠不足や寝すぎは、生活習慣病や心血管疾患、肥満、慢性炎症の原因となります。

ベストな睡眠時間は年齢などによって異なりますが、働き盛りの大人の場合は、7〜8時間程度の睡眠をとるよう心がけるとよいでしょう。

ストレスをため込まない

種々のストレスは、体内の炎症を悪化させます。

そのため、ストレスをうまく回避する、もしくは発散することが求められます。

ストレス発散法としては、運動や読書、音楽の視聴・演奏などがおすすめです。

「ストレスとの向き合い方」について、詳しくは以下の記事を参照してください。

関連記事:精神的につらいときの対処法:環境・思考・行動・脳内物質を最適化し、少しずつ慣れる

以上のような「健康的な生活」を身に付けるうえで重要なことは、いきなり多くのことを習慣化しようとはしない、ということです。

なぜなら、人間には「大きな変化を嫌う習性」があり、いきなり生活が一変すると、無意識のうちに元の生活に戻ろうとしてしまうからです。

まずは1〜2つ程度の良い習慣を生活に取り入れ、それがしっかりと習慣化されてから新たな習慣を加える、といった具合に、少しずつ生活習慣を改善していきましょう。

関連記事:未来を決定づける「習慣」【良い習慣を身に付ける方法】

デスクでダンベル運動をしながらパソコン作業をする女性
毎年、日本人の死因の上位を占めているがん・心血管疾患・肺炎のすべてに慢性炎症は関わっています。

そればかりか、シミやシワ、肌荒れといった美容面での弊害も引き起こします。

そう考えると、QOL(生活の質)を維持するうえで、もっとも警戒すべきことが「慢性炎症」だといえるでしょう。

お伝えしてきたとおり、慢性炎症の厄介なところは、「なかなか気づきにくい」ということです。

慢性炎症が重症化(重病に発展)してから対策を講じていては遅すぎます。

なぜなら、重症化してからでは、完治が難しくなったり、できることが限られたりするからです。

ゆえに、「予防」が必要となるのです。

慢性炎症を予防するうえで、「仮定する」ということが有効となります。

ようは、慢性炎症が既に起きている、もしくは発症しかけている、と仮定し、症状の有無にかかわらず、慢性炎症を食い止める生活を送る、ということです。

これまでの生活を振り返り、糖質の過剰摂取や運動不足、睡眠不足などに心当たりがある場合は、慢性炎症の火種が既に発生している可能性があります。

少しずつでも慢性炎症を予防する習慣を生活に取り入れ、健康と美容の維持に励んでみてください。
参考
  • 熊沢 義雄.『ガン、動脈硬化、糖尿病、老化の根本原因 「慢性炎症」を抑えなさい』.青春出版社,2017.
  • 宮坂 昌之;定岡 恵.『免疫と「病」の科学 万病のもと「慢性炎症」とは何か』.講談社,2018.
  • 池谷 敏郎.『体内の「炎症」を抑えると、病気にならない! : クスリに頼らず全身の臓器を元気にするコツ』.三笠書房,2017.
  • 齋藤 紀先.『休み時間の免疫学 第3版』.講談社,2018.
  • 田村 浩一.『図解入門よくわかる病理学の基本としくみ』.秀和システム,2010.
  • e-ヘルスネット(厚生労働省)|睡眠と生活習慣病との深い関係
  • 農林水産省|ゆっくり食べる