本記事では、糖質の作用・種類・弊害・適切な摂取方法や「炭水化物・糖質・糖類」の違い、糖質制限の注意点などをお伝えします。
糖質は「悪」なのか
昨今、何かと悪者扱いをされがちな「糖質」ですが、糖質は体にとって本当に悪なのでしょうか。
答えはYESでもありNOでもあります。
なぜなら、適切な量の糖質は体に有益に作用する一方で、とりすぎると害になるからです。
糖質は、エネルギー産生栄養素(三大栄養素)※のひとつである「炭水化物」の構成成分であり、身体活動をするうえで欠かせません。
その他多くの栄養素と同様、糖質も体が必要とする量を超えて摂取した場合は、さまざまな弊害(後述)を招く原因となります。
本当の悪は「糖質自体」ではなく、「糖質の過剰摂取」なのです。
いかにして糖質の「悪者化」を防ぐか、ということが問題となりますが、そこで必要となるのが「正しい糖質制限」です。
糖質の摂取量を減らすことでスリムな体型を目指す「糖質制限ダイエット(低炭水化物ダイエット)」が注目され始めたのは2012〜13年頃です。
いっときのブームでは終わらず、今でも多くの人がこのダイエット法に励んでいます。
これほどまでに人気のダイエット法となった要因としては、比較的苦痛が少ない、ということが挙げられます。
ほかのダイエット法(有酸素運動や食事制限)は、「面倒臭さ」や「生存本能」との戦いであり、多くの場合は相応の苦痛をともないます。
一方の糖質制限ダイエットでは、「食べる量は減らさず、糖質の摂取量を少なくするだけ」なので、慣れてしまえば苦痛はごくわずかです。
また、「食べる食材を変えるだけ」というお手軽さも、多くの人が糖質制限に取り組むきっかけになっているのは間違いないでしょう。
とはいえ、本来、糖質制限は「糖尿病治療(食事療法)」の一種であり、医師の指導のもと行うものです。
そのため、自己流で糖質を過度に制限したばかりに、頭痛や便秘、疲労感といった、さまざまな不調を経験する人も少なくありません。
これらの不調は、糖質制限に関する「正しい知識」をもつことで、ある程度は回避することが可能です。
健康で美しい体を保つには、糖質の適切な摂取量や摂取タイミング、食べ方、糖質を多く含む食品、糖質制限をする際の注意点などを理解する、ということが重要となります。
以下で詳しくみていきましょう。
糖質とは
糖質に関する正しい知識は、食材を選別する際などに役立ちます。
あまり深いところまで理解する必要はないので、ざっくりと基礎的な部分だけでも押さえておきましょう。
炭水化物・糖質・糖類の違い
前述したとおり、糖質は「炭水化物」の構成成分です。
糖質と炭水化物はよく混同されますが、炭水化物から食物繊維※を引いたものが糖質であるため、厳密には違うものとなります。
とはいえ、「炭水化物≒糖質」と理解していたとしても、あまり困ることはないと思います。
食品の成分表を見る際には、「糖質」もしくは「炭水化物」の数値を優先的にチェックし、量が多いものは極力避けるようにしましょう。
単糖類・少糖類・多糖類
糖質は「単糖類」「少糖類」「多糖類」の3つに大別され、それぞれさらに細かく分類されます(詳しくは後述します)。
市販されている飲食物のパッケージなどでよく見る「糖類」とは、糖質のうちの単糖類と二糖類(後述)の総称です。
一部の糖質のことを「糖類」とよぶため、炭水化物と同様、「糖類≒糖質」と理解していても、あまり困ることはなさそうです。
以上をまとめると次のようになります。
- 糖質=炭水化物−食物繊維(炭水化物=糖質+食物繊維)
- 炭水化物>糖質>糖類
体内に入った糖質の使われ方
体内に入った糖質は消化(分解)され、単糖類に変化した後に脳や筋肉、赤血球※などのエネルギー源となります。
赤血球のエネルギー源はブドウ糖しかないため、糖質はなくてはならない栄養素だといえます。
脳と赤血球が1日で消費する糖質量は、体格や性別に関係なく、約130gとされています。
糖質を摂取すると、運動や知的作業で消費した分のエネルギーが補給され、余った分は肝臓や筋肉に「グリコーゲン(多糖類の一種)」として蓄えられます。
肝臓や筋肉に十分な量の糖質が蓄えられても、まだ体内に糖質が余っている場合は「体脂肪」となって蓄積されます。
摂取した糖質が使われる過程をまとめると以下のようになります。
- 糖質を摂取・消化する
- 消費された分のエネルギーが補給される
- 糖質が余る
- 筋肉や肝臓に備蓄される
- 糖質が余る
- 体脂肪になる
以上のことから、運動などによって「消費エネルギー量」を増やしたり、適度な糖質制限によって「摂取エネルギー量」を少なくしたりすることは、体脂肪の増加を防ぐうえで理にかなった行動だといえます。
ちなみに、ブドウ糖は肝臓で産生(=糖新生)することができます。
糖新生では、ピルビン酸や乳酸といった糖質以外の物質が材料となり、1日に約150gのブドウ糖がつくられます。
糖質の種類
既に述べたとおり、糖質は「単糖類」「少糖類」「多糖類」の3つに分類されます。
単糖類とは、それ以上分解されない最小単位の糖質のことで、ブドウ糖(グルコース)、果糖(フルクトース)、ガラクトース、マンノース、リボースなどがあります。
ブドウ糖は、果物や穀類などに多く含まれ、自然界にもっとも多く存在する単糖類であると同時に、人体にとってなくてはならない栄養素でもあります。
果糖は、その名のとおり果物に多く含まれているほか、ジュースやお菓子などにも多く含まれています。
少糖類は「オリゴ糖」ともよばれ、上述の単糖類が2つ、もしくは3つ以上結びついたものを指します(後述する多糖類ほどは分子量が大きくありません)。
少糖類のなかでも、単糖類が2つ結合したものを「二糖類※」といい、代表的なものとしては、ショ糖(スクロース、サッカロース)、麦芽糖(マルトース)、乳糖(ラクトース)などがあります。
なかでも、乳製品に多く含まれる「乳糖」の摂取には注意が必要です。
というのも、日本人を含むアジア人種の大半は、乳糖を消化するのに必要な「ラクターゼ」という消化酵素が不足しており、乳製品をとっても十分に消化(分解)することができず、お腹の張りやけいれん痛、下痢、吐き気などを引き起こす※おそれがあるからです。
一説によると、アジア人種のおよそ8割が「乳糖不耐症」であるとされています。
以上のことから、無理して乳製品をとる必要はないと思います。
ちなみに、現代人になじみ深く、健康を害する大きな要因となっている「砂糖」は、「ショ糖」を主成分とする調味料(甘味料)です。
それぞれの二糖類は、以下の単糖類の組み合わせによってできています。
- ショ糖=ブドウ糖+果糖
- 麦芽糖=ブドウ糖+ブドウ糖
- 乳糖=ブドウ糖+ガラクトース
多糖類とは、少糖類よりも多くの単糖類が結合してできた糖質を指し、「消化性多糖類」と「難消化性多糖類」の2つに分類されます。
消化性多糖類とは、ヒトの消化酵素によって消化される多糖類を指し、代表的なものとしては、でんぷんやグリコーゲン(糖原)などがあります。
これまで述べてきた二糖類や少糖類、消化性多糖類は、消化酵素のはたらきによって単糖類に分解された後、小腸で吸収されます。
難消化性多糖類とは、ヒトの消化酵素で消化されない多糖類を指し、代表的なものとしては、レジスタントスターチ(難消化性でんぷん)、難消化性デキストリン、難消化性オリゴ糖、糖アルコールなどがあります。
レジスタントスターチは、冷えたごはんやトウモロコシ、グリーンバナナなどに多く含まれています。
糖アルコールは低カロリーな甘味料として多くの加工食品に使われており、主なものとしては、キシリトールやソルビトール、マルチトール、還元水飴などがあります。
難消化性多糖類は食物繊維の仲間であり、摂取することで血糖値抑制作用や整腸作用、中性脂肪抑制作用などが期待できるため、積極的にとるべき栄養素だといえます(ただし、とりすぎると下痢などを招くことがあります)。
「オリゴ糖」や「レジスタントスターチ」について、詳しくは以下の記事を参照してください。
関連記事:健康と美容のカギを握る「腸」【腸内環境の整え方】
以上、さまざまな種類の糖質を挙げてきましたが、健康にとって害になりにくい糖質は「難消化性多糖類」のみです。
果物に多く含まれる「果糖」は、直接的に血糖値の上昇には関与しません。
くわえて果物には食物繊維やビタミンなどが豊富に含まれているため、適量の果物を食べることには、ある程度の健康効果が期待できます。
しかし、果糖は血糖値の上昇には関与しないものの、中性脂肪に変換されやすい性質があるため、ほかの糖質と同様、摂取量は控えめにするのがベストです。
糖質のとりすぎがもたらす弊害
糖質のとりすぎは「高血糖※」を招きます。
「高血糖=血液が濃い状態」です。
ドロドロになった血液を薄めるために、体内では多量の水分が使われるため、脱水症状に陥りやすくなります(喉が渇くようになります)。
そればかりか、高血糖の状態が続くと、糖尿病や心筋梗塞、肝硬変などの発症リスクが高まるとされています。
血糖値スパイクと糖尿病
糖質の過剰摂取によって、食後に血糖値が乱高下する(急上昇と急降下を繰り返す)ことを「血糖値スパイク※」といいます。
血糖値スパイクが起きると、強い眠気やだるさ、頭痛、吐き気、空腹感、動悸、気絶などの症状が現れやすくなり、時には生活に支障をきたす場合もあります。
ちなみに、血糖値スパイクは、糖尿病を発症する約10年前からみられる症状とされています。
血糖値スパイクの症状がみられるからといって、将来的に必ずしも糖尿病になるとは限りませんが、糖尿病になるリスクが高まっている可能性は十分に考えられます。
ゆえに、食後に強い眠気やだるさといった症状がみられる場合は、できるだけ早急に糖質の摂取量を見直し、未然に糖尿病の発症を防ぐ必要があります。
肥満が引き起こす病気
「高血糖を招く食事」や「運動不足」の状態が続けば続くほど、体脂肪は確実に増えていきます。
そして、生活習慣の改善を怠り、体脂肪が過剰に蓄積された状態を「肥満」といいます。
私たちにとって「肥満」という言葉は、比較的なじみ深いこともあり、軽くとらえられがちです。
しかし、実際のところは「さまざまな病気の前触れ」であり、決して看過できない存在です。
肥満が関与する病気や症状には、以下のようなものがあります。
- 糖尿病
- 動脈硬化
- 高血圧
- 脂質異常症
- 高尿酸血症
- 痛風
- 心筋梗塞
- 狭心症
- 脳梗塞
- 脂肪肝
- 睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
- 変形性膝関節症
- 変形性脊椎症
- 肥満関連腎臓病
- 月経異常・不妊
- がん
なぜ、肥満はこれほどまでに多くの病気と関わっているのでしょうか。
その要因のひとつとしては、「慢性炎症」が挙げられます。
肥満は体に慢性的に続く炎症をもたらし、その状態が長引くほどに、より多くの病気を発症しやすくなります。
「慢性炎症」について、詳しくは以下の記事を参照してください。
関連記事:万病のもと「慢性炎症」の原因・予防法・関連疾患【肥満・糖化・酸化を抑えることが最重要】
肥満によって体重が増加すると、ヒザや腰などの関節に痛みが出やすくなります。
関節の疾患につながるばかりか、動くのが億劫になることで運動頻度が減り、さらに肥満が悪化する、という「負のスパイラル」に陥ることも考えられます。
また、肥満になると、舌や喉の周りに脂肪がつくことによって気道が狭くなります。
その結果、睡眠の質が低下し、さらなる不調を招くことも考えられます。
体の老化を加速させる糖化
糖質の過剰摂取は、体の「糖化」を促進させる要因となります。
糖化とは、体が「焦げる」ことを指し、前述した慢性炎症の原因のひとつとされています。
糖化が進むと、種々の病気や容姿の衰えなどを引き起こし、QOL(生活の質)の低下を招きます。
糖化は、体内で余った糖質がたんぱく質と結びつくことで生成される
「糖化」について、詳しくは以下の記事を参照してください。
関連記事:老化の原因となる「糖化」と「酸化」【AGEsと活性酸素が増える原因と対処法】
糖質の適切な摂取方法
とりすぎた糖質は私たちの体にとって「害悪」となり、前述したようなさまざまな悪さをし始めますが、裏を返せば、摂取量さえ間違えなければ「強い味方(良質なエネルギー)」になってくれるということです。
糖質は、ごはんやパンなどの主食や甘い飲食物・いも類・果物などに多く含まれているため、これらの摂取量を適切に管理することが「糖質制限の基本」となります。
推奨される摂取量
以下では、糖質研究の第一人者である山田悟医師が提唱されている「ロカボ」という食事法を基に、適切な糖質の摂取量を考えていきます。
体が必要とする糖質量は、その日の運動量などによって異なりますが、「1日」の総摂取量の目安は70〜130g程度とされています。
食後に過度の高血糖を起こさないためには、1回の食事における糖質の摂取量は、40g以下にする必要があります。
くわえて、体の糖質が不足し、極度の低血糖の状態になるのを防ぐためには、1回の食事につき、最低でも20gの糖質を摂取する必要があります。
よって、1回の食事につき、20〜40g程度の糖質を摂取するのが望ましいといえます。
当然ながら、糖質は主食のほかに、おかずなどにも含まれています。
主食以外の料理に含まれる糖質量を厳密に計算するのは難しいため、ややアバウトにはなりますが、「主食以外には10g程度の糖質が含まれている」と考えて計算することをおすすめします。
ようするに、主食からとる糖質量は、1回の食事につき20〜30g程度にする、ということです。
食品名 | 摂取量 |
---|---|
ごはん | 茶碗半膳 |
食パン | 8枚切り1枚 |
パスタ・ラーメン・うどん・そば | 1人前の半分くらい |
少ないと思われるかもしれませんが、その分多くのたんぱく質や脂質、食物繊維などをとるようにすれば空腹感を感じません。
以上のことを考慮し、1日の総摂取量の目安である70〜130gの糖質を食事回数で等分するようにしましょう。
たとえば以下のような具合です(1日3食の場合)。
- 運動量が多い日:40g(主食30g+おかず10g)×3回(合計120g)
- ほどほどに動く日:30g(主食20g+おかず10g)×3回(合計90g)
- ほとんど動かない日:25g(主食15g+おかず10g)×3回(合計75g)
1回の食事でとる糖質の量が多くなればなるほど、血糖値が上がりやすくなるため、1日の食事回数が少ない場合でも、1回の摂取量(40g)を守るようにしましょう。
たとえば、1日2食の場合は、「40g(主食30g+おかず10g)×2回(合計80g)」のように設定しましょう。
1日1食の場合、1回の食事で糖質を最低でも70g(1日総摂取量の目安の下限値)摂取する必要が出てくるため、1日の食事回数は最低でも2回以上にすることをおすすめします。
ちなみに、同じ食品を同じ量食べるにしても、複数回に分けて少量ずつ食べたほうが血糖値の上昇を招きづらい、とされています。
そのため、食事回数を「4〜5回程度」に増やすのも「高血糖の予防」という観点からは有効だといえます(食事回数が増えるほどに「虫歯になりやすい」「サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)※が活性化されない」といったデメリットも出てきます)。
食事回数を5回に設定した場合の例としては、「20g(主食10g+おかず10g)×5回(合計100g)」などが考えられます。
なお、間食(おやつ)はとらないのが理想ですが、どうしても空腹感に耐えられないときは、1日あたり「糖質量10g以内」で間食を楽しむようにしましょう。
毎食同じ量の糖質を摂取する
先述のとおり、糖質は食事回数で等分して摂取することが重要です。
そうすることで、1日の血糖値の変動を最小限に抑えることができ、血糖値スパイク(血糖値の乱高下)の予防につながります。
ちなみに、糖質の摂取量にとくに注意が必要な時間帯は、朝と夕方(夜)です。
朝は血糖値が上昇しやすい
「一日の始まり」である朝に糖質を多くとりたくなりますが、朝に多量の糖質(主食)をとるのは避けたほうがよいでしょう。
というのも、朝は血糖値が上昇しやすくなっているからです。
当然ながら、睡眠時には食事をとらない(=空腹時間が長時間続く)ため、大抵の人は朝食前にもっとも血糖値が下がった状態になります。
くわえて、朝には体を覚醒させるために血糖値を上げさせるホルモンが分泌されます。
体がこのような状態ときに多量の糖質を摂取すれば、高確率で血糖値スパイクを引き起こします。
夕食時に摂取した糖質は体脂肪になりやすい
夕方から深夜にかけて、体内では「
この物質には、脂肪の合成を促すはたらきがあるとされています。
そのため、このたんぱく質が体内に多く存在する夕方から深夜にかけて多量の糖質を摂取することは、「肥満への最短ルート」だといえます。
逆にいえば、早い時間に夕食を済ませることは、肥満を予防・改善するうえで有効だということです。
糖質制限の注意点
糖質制限(=高血糖の予防)をする際に注意すべき点は以下のとおりです。
- 過度の低血糖
- 食物繊維の不足
- 食事の「速さ」と「順番」
- 食品の温かさ
- 食後の行動
- 持病と糖質制限の相性
過度の低血糖
先にも少し触れましたが、過度に糖質制限をすると、以下のような弊害を引き起こすことがあります。
- 低血糖症
- 筋肉量の低下
- 体臭・口臭の悪化
低血糖症
低血糖症とは、血糖値が正常範囲を下回っている状態を指します。
症状としては、空腹感や発汗、悪心、熱感、不安、ふるえ、動悸、疲労感、脱力感、思考力の低下などがあり、重度の場合では、頭痛、霧視または複視、発声困難、錯乱、けいれん発作、昏睡といった症状がみられます。
注意すべき点は、低血糖症は糖質をとりすぎても起こる、ということです。
過剰に糖質を摂取することで多量のインスリン※が分泌され、その結果、必要以上に血糖値が低下してしまうわけです。
筋肉量の低下
インスリンの過剰な分泌が問題となる一方で、インスリンの「不足」も体に悪影響を及ぼします。
インスリンには筋肉を合成する作用があるため、過度に糖質を制限し、インスリンの分泌量が少なくなることで、筋肉量の低下を招くおそれがあるのです(ゆえに、筋力トレーニングの後に糖質をとることは有効だといえます)。
「インスリンの分泌量(=糖質の摂取量)は、多すぎても少なすぎてもダメ」ということを覚えておきましょう。
ちなみに、インスリンの効きをよくするには、有酸素運動や筋力トレーニングなどが有効とされています。
体臭・口臭の悪化
体臭や口臭の悪化には、「ケトン体」という物質が関与しています。
体内のブドウ糖が不足すると、脂肪や筋肉を分解してエネルギーがつくられますが、その際に発生するのがケトン体です。
この物質には独特の臭いがあるため、体内のケトン体の増加は、体臭や口臭の悪化として現れます。
糖質の摂取量を1日50g以下に抑え、ケトン体を主なエネルギー源にしてスリムになることを目指す「ケトジェニックダイエット」がありますが、このダイエット法は素人が気軽に行うようなものではありません。
過度な糖質制限には前述したようなデメリットがあるほか、死亡リスクが上がるとする論文もあるため、緩やかな糖質制限である「ロカボ」を推奨します。
食物繊維の不足
ごはんなどの炭水化物には食物繊維が豊富に含まれているため、摂取量が減ると便秘気味になることがあります。
そのため、炭水化物を減らすと同時に、野菜・豆類・きのこ類・海藻類といった食物繊維を豊富に含む食品を積極的にとるようにしましょう。
くわえて、「水分」を多くとることも有効です。
食事の「速さ」と「順番」
食べる「速さ」と「順番」にも注意が必要です。
早食いは血糖値の急上昇を招くため、最低でも20分はかけて食事をするようにしましょう。
食事の最後に糖質(主食)をとることで、糖質の急上昇をある程度は予防することができます。
具体的には以下のような順番で食べるとよいでしょう。
野菜(食物繊維)→肉・魚(たんぱく質)→汁物→ごはんやパン(炭水化物)
食品の温かさ
炭水化物が冷えると、でんぷんの一部がレジスタントスターチに変化します。
先にも述べたとおり、難消化性多糖類であるレジスタントスターチは、ヒトの消化酵素では消化されません。
結果的に、糖質の吸収を抑えることになるばかりか、腸内環境の改善や血糖値上昇の抑制といった、さまざまな健康効果も期待できます。
そのため、ホカホカごはんや焼きたてのパンをすぐに食べるのではなく、ある程度冷ましてから食べるのが理想といえます。
とはいえ、冷蔵保存していたごはんに関しては、そのまま食べると消化不良などを招くことがあるため、レンジで少し温めてから食べるとよいでしょう(パンは冷たいまま食べても問題ない場合が多いと思います)。
食後の行動
食後はゆっくりしていたいものですが、食後にゆっくりすることで血糖値は上がりやすくなります。
食後にすぐ立ち上がり、軽い運動(家事やウォーキング)をすることで、食後の高血糖をある程度は抑制できます。
持病と糖質制限の相性
糖質制限をする前に、「持病と糖質制限の相性」を確認する必要があります。
なぜなら、病気のなかには、糖質制限をすると悪化するものがあるからです。
たとえば以下のような病気が該当します。
- 糖尿病
- 重度の肝硬変
- 活動性膵炎
- 長鎖脂肪酸代謝異常症
- 尿素サイクル異常症
糖質制限は、糖尿病治療にもっとも効果的な食事療法ですが、既に薬物療法を受けている人は低血糖を引き起こす危険があるため、医師の指導の下に行うようにしてください。
上記以外の病気を持っている方も、不安であれば一度かかりつけ医に相談してから糖質制限を行うとよいでしょう。
お伝えしてきたとおり、糖質が「敵」になるか「味方」になるかは、摂取量によって決まります。
糖質は、たんぱく質や脂質と比べて素早くエネルギー源となり、私たちの活動をサポートしてくれます。
摂取量さえ間違えなければ、優れた効果を発揮する栄養素です。
「糖質を多く含む食品」や「適切な摂取量・食べ方」などを理解し、糖質を有効に活用していきましょう。
参考