本記事では、ドライアイの症状や悪化を招く要因、予防&対処法、治療法などをお伝えします。
文明の利器がもたらした現代病「ドライアイ」
ドライアイは、目の乾燥感や痛み、不快感などを主な症状とする現代病のひとつです。
原因は複合的で、長時間目を酷使することや、パソコンやエアコン、コンタクトレンズといった、いわゆる「文明の利器」を使用することがドライアイの発症に大きく関与しています。
程度の差こそあれ、現在、日本には2000万人以上の患者がいるとされています。
ドライアイには以下の2つのタイプがあります。
- 涙の「量」の異常によるもの(タイプ1)
- 涙の「質」の異常によるもの(タイプ2)
さまざまな要因によって、涙の量や質に異常をきたすことでドライアイは発症します。
涙は「油層」「水層」「ムチン層」という3つの層によって成り立っており、それぞれがバランスをとることで安定性を保っています。
ドライアイはこれらのバランスを不安定にし、その結果として涙が蒸発しやすくなったり、目の表面が傷つきやすくなったります。
また、目の症状にとどまらず、頭痛や肩こり、うつ病といった、目以外の不調や病気を引き起こすおそれもあります。
ドライアイを悪化させる要因を排除した生活を心がけ、そのうえで適切な治療を受ければ、ドライアイを寛解させることができます。
以下で詳しくみていきましょう。
ドライアイの症状
ドライアイの主な症状は次のとおりです。
- 目が乾く
- 目が痛む
- 目が疲れる
- 目が重たい感じがする(目が開けにくい)
- 目がかゆい
- 目やにが出る
- 目が充血している
- 目がゴロゴロする
- 目に不快感がある
- 物がかすんで見える
- 光を見るとまぶしい
- 涙が出る
これらの症状に多く当てはまる場合、ドライアイの可能性があります。
ただし、眼精疲労や老眼、結膜炎などもドライアイと同様の症状をきたすことがあるため、判別するためにも早期に眼科を受診する必要があります。
ドライアイの悪化を招く要因
ドライアイは、「マイボーム腺※の異常(マイボーム腺機能不全)」や「涙の分泌量の低下」などによって引き起こされると考えられていますが、詳しくはわかっていません。
ドライアイの発症・悪化に関与するものとしては、以下のようなものがあります。
- パソコン・スマートフォン・タブレットなどの使用
- エアコン(暖房器具)の使用
- コンタクトレンズの装用
- 低温・低湿な環境
- 汚い空気(花粉やホコリ)
- 強い風
- ストレス
- 肥満・糖尿病
- 運動不足(血行不良)
- 睡眠不足
- 紫外線
- マイボーム腺をふさぐメイク
- 車の運転
- 不良姿勢
- 習慣的な洗眼
- 飲酒・喫煙
- 服薬
- 病気
- マスクの着用
- 飛散したアルコール消毒液
パソコン・エアコン・コンタクトレンズの使用
ドライアイの大きな要因として、俗に「3コン」と呼ばれるものがあります。
それは、パソコン、エアコン、コンタクトレンズを指します。
これらはドライアイの発症・悪化に深く関与していると考えられており、これらの使用を意識的に減らすことは、ドライアイの悪化を防ぐうえでの基本といえます。
低温・低湿な環境
冬の低温・低湿な環境はドライアイを発症・悪化させる大きな要因となります。
体温が下がることでマイボーム腺から分泌される油が詰まりやすくなり、その結果、角膜表面を覆う油の量が減り、目が乾きやすくなります。
また、エアコンなどで室温を高くしたとしても、空気が乾燥していれば、目の表面も乾きやすくなります。
エアコンやファンヒーターなどと比べると、オイルヒーターは空気の乾燥を招きづらいとされているため、冬の室内ではオイルヒーターで室温を上げ、それにくわえて加湿器も使うとよいでしょう。
ちなみに、ドライアイにとって理想的な室内環境の目安は以下のとおりです。
- 室温:17〜28℃程度
- 湿度:40〜70%程度
なお、湿度が60%を超えるとカビが繁殖しやくすなります(カビもドライアイを悪化させる要因となります)。
そのため、加湿器で部屋を高湿な状態にする場合は、定期的に部屋を換気し、カビの発生を予防することが必須となります。
汚い空気(花粉やホコリ)
空気中を漂うハウスダスト(ダニの死がいやフン、カビ、繊維、花粉など)は涙を汚し、マイボーム腺を詰まりやすくします。
そのため、定期的に部屋を掃除することが必要となります。
掃除の際はホコリが立ちやすいため、目を覆う「保護メガネ」などをかけて行うことをおすすめします。
強い風
強い風が目に当たることで涙が蒸発し、ドライアイの症状を悪化させます。
ドライアイの症状がつらいときは、次のことを心がけるとよいでしょう。
- 風の強い日は外出を極力控える
- エアコンや扇風機の風速を最弱(微風など)にしたうえで、顔に直接当たらないようにする
- 走らない(ゆっくり移動する)
ストレス
ストレスや不安、緊張は涙の分泌量の低下を招きます。
できるだけリラックスするように心がけ、意識的にストレスを発散することは、ドライアイを改善させるうえで有効です。
ストレスや不安をコントロールする方法としておすすめなのが「マインドフルネス瞑想」です。
これは、呼吸に意識を集中させて、心身がリラックスした状態をつくる瞑想法です。
肥満・糖尿病
過食や運動不足によって肥満になると、脂肪細胞が体のさまざまな部位に炎症を引き起こすようになります。
目に炎症が起きると、ドライアイの悪化につながるおそれがあります。
また、体の「糖化」もドライアイの発症に大きく関わっています。
糖質のとりすぎや早食いは、糖化を招く原因となるため注意が必要です。
「糖化」について、詳しくは以下の記事にて解説しています。
関連記事:老化の原因となる「糖化」と「酸化」【AGEsと活性酸素が増える原因と対処法】
運動不足(血行不良)
血流の悪化はドライアイの原因のひとつとされています。
そのため、運動をして全身の血流を促進することは、ドライアイの悪化を防ぐうえで重要となります。
また、前述した肥満によるドライアイの悪化を防ぐうえでも有効です。
ドライアイを改善するうえで、ウォーキングなどの有酸素運動は非常に効果的ですが、外を歩くと強い風や紫外線、花粉などにさらされる可能性があります。
そのため、スポーツジムなどの運動施設に通うことをおすすめします。
くわえて、血行を促進する方法としておすすめなのが、ミストサウナやスチームサウナです。
一般的なドライサウナと違い、ミストサウナやスチームサウナの室内は多湿なため、目に悪影響を与える可能性が低いといえます。
高温・多湿な環境に適切な時間(10〜15分程度)身を置くことで、ドライアイへの好影響が期待できます。
とはいえ、ミストサウナやスチームサウナのドライアイへの影響は未知数な部分が多いため、サウナに入った後に目の不調を感じるようであれば、使用を控えたほうがよいでしょう。
睡眠不足
睡眠時間が短い、もしくは睡眠の質が悪い人は、涙の分泌量の低下や目の炎症リスクの上昇を招きやすいとされています。
また、睡眠障害は精神状態の悪化を招くため、それによって、「痛み」や「不快感」といったドライアイの症状をより感じやすくなる可能性もあります。
早起きしたり、日中にしっかり運動をしたりすることで、睡眠の質の向上が期待できます。
関連記事:健康・美容・脳機能の維持に欠かせない「睡眠」【睡眠不足が招く弊害とその解消法】
紫外線
強い紫外線は目の炎症を招き、ドライアイの症状を悪化させます。
とくに夏の時期や雪山では注意が必要です。
対策としては、サングラスをかけたり、帽子を被ったりすることが有効となります。
マイボーム腺をふさぐメイク
メイクをする際、アイライナーを目の際ギリギリに引くと、マイボーム腺をふさいでしまうことがあります。
そのため、目の際から最低でも3ミリ以上離してアイライナーを引くようにしましょう。
また、皮脂やメイク汚れによって目元が不潔な状態になると、マイボーム腺でDemodex(デモデックス)※が繁殖しやすくなります。
デモデックスもドライアイを悪化させる要因であるため、できるだけ目元を清潔な状態に保つことが重要となります。
車の運転
人は集中するとまばたきの回数が減少し、目が乾燥しやすくなります。
また、車のエアコンの風が直接目に当たることもドライアイを悪化させる要因となります。
運転時は意識的にまばたきを行い、エアコンを切る、もしくは風向を下に向けるなどの工夫が必要となります。
不良姿勢
スマートフォンやパソコンを使用する際に姿勢が悪いと、目と画面の距離が近くなったり、上目遣いになったりします。
これらはドライアイや眼精疲労を悪化させる要因となるため、猫背でパソコンをしたり、寝っ転がってスマートフォンを使用したりしないようにしましょう。
くわえて、デスクワークや読書、勉強などをする際の姿勢にも注意しましょう。
ちなみに、目とスマートフォンの適切な距離は30cm以上とされ、パソコン・タブレット端末の場合は40cm以上とされています。
また、適切な距離であっても、画面を見上げると目が乾燥しやすくなるため、軽く見下ろすように画面を見るようにしましょう。
習慣的な洗眼
水道水や洗眼薬で目を洗いすぎると、ドライアイの悪化を招くおそれがあります。
目を洗うと目の表面にある油分やムチンが洗い流され、その結果として目が乾いた状態になりやすくなります。
目に薬剤などが入ったときはしっかりと目を洗う必要がありますが、そのようなとき以外は、できるだけ目に水をいれないということを心がけましょう。
また、外出先で目にゴミが入ったときのために、人工涙液型目薬(ソフトサンティアやアイリスCL-Ⅰネオ)や点眼型洗眼薬(ウェルウォッシュアイなど)をバッグに入れておくとよいでしょう。
目薬などに含まれる防腐剤はドライアイを悪化させるため、商品を選ぶ際は「防腐剤フリー」のものを選ぶようにしましょう。
飲酒・喫煙
飲酒によって、目表面の涙が蒸発しやすくなります。
また、喫煙は血流低下をもたらしたり、煙が目を刺激したりすることでドライアイの悪化を招きます。
服薬
抗不安薬や睡眠薬、抗がん剤、血圧下降剤などを服用することで、ドライアイの発症や悪化を招くおそれがあります。
病気
ドライアイを招く病気があります。
代表的なものとしては、シェーグレン症候群やスティーブンス・ジョンソン症候群、膠原病、糖尿病、リウマチなどが挙げられます。
マスクの着用
マスクを着用しながら呼吸をすると、マスク上部(頬とマスクの間)にできる隙間から吐いた息が漏れ、目に直接当たることでドライアイの悪化を招きます。
ワイヤー入りのマスクを使用し、できるだけ隙間を小さくしたり、マスクを着用する必要のない場面では外すようにしたりするとよいでしょう。
飛散したアルコール消毒液
噴霧した消毒液が目に入ることで、ドライアイの悪化を招きます。
微量の消毒液でも目に入れば大きな刺激を与えてしまうため、消毒液をポンプやスプレーなどで噴霧する際は、極力飛散しないようにゆっくりと行うなどの工夫が必要です。
ドライアイの予防&対処法
ドライアイを改善させるためには、上記の「ドライアイの悪化を招く要因」を理解したうえで、行動や環境を改善していくことが重要となります。
具体的な対策をまとめると以下のようになります。
- パソコン・エアコン・コンタクトレンズの使用時間を極力少なくする
- 作業時は最低でも1時間ごとに10分以上の休憩をとる
- 低温・低湿・強い風・強い紫外線・汚れた空気といった「目に悪影響を及ぼす環境」を極力避ける
- ストレスをため込まない(生活にマインドフルネス瞑想を取り入れる)
- 糖質のとりすぎや早食い、暴飲暴食を控える
- スポーツジムに通う
- ミストサウナやスチームサウナに通う(ドライサウナはNG)
- サウナに行かない日は湯船につかる
- 睡眠時間を確保する(7.5時間程度)
- 早起きや運動をして、睡眠の質の向上を図る
- 紫外線対策をする
- 目元をしっかり洗う(メイクをしっかり落とす)
- 作業時や運転時は、意識的にまばたきをする
- 普段から姿勢を良くする
- むやみに目を洗わない
- 禁酒・禁煙をする
- 頬とマスクの隙間を小さくする(適宜マスクを外す)
- アルコール消毒液が飛散しないように噴霧する
- ドライアイ用のメガネを着用する
- メガネ・コンタクトレンズは度の合ったものを使用する
- デスクスタンドなどを使い、手元を適切な明るさにする
- こまめに水分補給をする
- ドライアイの改善に役立つ栄養素をとる(後述)
- ドライアイの自宅ケアを行う(後述)
ドライアイを改善させる栄養素
ドライアイの改善に役立つとされる栄養素は以下のとおりです。
栄養素 | 効果 |
---|---|
オメガ3脂肪酸 | 目表面の「水」と「油」を増やす |
ラクトフェリン | 目表面の「水」を増やす |
ビタミンD | 目表面の「油」を増やす(とりすぎに注意) |
ビタミンA | 目表面の「ムチン」を増やす(とりすぎに注意) |
オメガ3脂肪酸は非常に酸化しやすい成分であるため、オメガ3脂肪酸のサプリメントは、既に酸化している可能性が高いといえます。
そのため、オメガ3脂肪酸は食事(サバ缶やアマニ油、えごま油など)からとるのが望ましいといえます(熱に弱いので注意が必要です)。
関連記事:体に良い油「オメガ3脂肪酸」のはたらき【α-リノレン酸・EPA・DHAの効果と摂取方法】
ラクトフェリンは牛乳やヨーグルト、ナチュラルチーズなどの乳製品に多く含まれています(おすすめは「ラクトフェリンヨーグルト」です)。
ビタミンDとビタミンAは体に蓄積されるビタミン(脂溶性ビタミン)であるため、これらを多く含むサプリメントを摂取することで、過剰症を引き起こすおそれがあります。
そのため、これらのビタミンも食事から摂取するとよいでしょう(ビタミンDは日光浴によっても生成されます)。
ビタミンDは魚類(あん肝、しらす干し、マイワシ、サケなど)やきのこ類(きくらげ、干ししいたけなど)に多く含まれています。
ビタミンAはレバー(とくに鶏・豚)やニンジン、ほうれん草、卵黄、バターなどに多く含まれています。
ドライアイの自宅ケア
自宅でできるドライアイのケアは次のとおりです。
- 温罨法
- リッドハイジーン(眼瞼清拭)
- 意識的なまばたき
温罨法
「
目を温めることでマイボーム腺の油が溶けやすくなります。
さらには、リラックスすることで副交感神経が優位になり、涙腺から水が出やすくなります。
温罨法を行ううえでのポイントは以下のとおりです。
- 低めの温度(40℃以下)で行う
- 1回5分
- 1日2回(朝・晩)
- まぶたを濡らさない
- 使用中・使用後に目や皮膚に痛みや違和感を感じたら、すぐに中止する
上記のやり方は、ドライアイ研究の第一人者である有田玲子医師が推奨されている方法を基にしています。
温罨法を行う際は、ホットタオルを使うのではなく、市販の目元温めグッズを使うようにしましょう(「あずきのチカラ」がおすすめです)。
というのも、ホットタオルはすぐに冷めてしまい、温めが不十分になりやすいうえ、まぶたが濡れることで、皮膚温度の低下を招きやすいからです。
目を高温で温めたり、長時間温めることは、目を傷つける原因(白内障などの原因)となるため、絶対に控えましょう。
リッドハイジーン
リッドハイジーン(別名:
目元を丁寧に洗うことで、前述したデモデックス(皮膚に生息するダニ)が皮脂腺やマイボーム腺で繁殖するのを抑えることができます。
デモデックスの繁殖の抑制には、「ティーツリーオイル」という成分が有効とされています。
ティーツリーオイルを配合した「ティーツリー洗眼フォーム」が何種類か販売されているので、試してみることをおすすめします。
意識的なまばたき
まばたきが不完全(瞬目不全)だと、目の表面を保護する油の分泌が不十分になります。
そのため、普段から意識的にまばたきをすることは、立派なドライアイ対策となります。
ドライアイの治療法
ドライアイの治療法には、次のようなものがあります。
- 点眼治療(目薬・眼軟膏)
- 抗菌内服薬
- 涙点プラグ
- アテロコラーゲン注入
- 涙点閉鎖
- マイバム圧出
- LipiFlow
- IPL(Intense Pulsed Light)
点眼治療(目薬・眼軟膏)
点眼治療は、もっとも基本的なドライアイの治療法です。
ドライアイの目薬には複数の種類があり、症状に合わせて処方されます。
ドライアイ治療に用いられる主な点眼薬は次のとおりです。
目薬の名称 | 特徴 |
---|---|
ジクアス(ジクアスLX) | 涙に含まれる「水」「油」「ムチン」の量を増加させる |
ムコスタ | 涙に含まれる「ムチン」の量を増加させる 防腐剤が含まれていない |
ヒアレイン | 目に潤いを与える 角膜上皮の修復を促す 防腐剤が含まれていない「ヒアレインミニ」がある |
フルメトロン | 副腎皮質ステロイド薬 目やまぶたの炎症を抑える 多くの炎症性眼疾患に用いられる 長期使用により、眼圧が上がることがある(定期的に眼圧を測る必要がある) 緑内障、角膜ヘルペス、後嚢下白内障などを誘発するおそれがある |
アジマイシン | 抗菌作用や殺菌作用がある 副作用として、涙に含まれる「油」の量を増加させる作用がある 通常は結膜炎や眼瞼炎、麦粒腫、涙嚢炎などに用いられる |
また、重症例では自身の血液から作られる「血清点眼」という目薬を使うこともあります(血清点眼を作れる施設は限られています)。
ほかにも、傷がひどい場合などには「眼軟膏(タリビット・エコリシン・フラビタンなど)」を使う場合もあります。
抗菌内服薬
テトラサイクリン系やマクロライド系(ジスロマック)といった「抗菌内服薬」もドライアイに有効とされています。
詳しくは担当の医師にお聞きください。
涙点プラグ
まぶたにある涙の通り道にプラグ(栓)を差し込む手術治療です。
分泌された涙は「目→鼻→口」という経路で流れていきます。
上下のまぶたの鼻側(目頭)には涙の排出口があり、両方の穴、もしくはいずれか一方の穴をふさぐことで、目にとどまる涙の量を増やすわけです。
術後に調子が悪ければプラグを抜くことも可能です。
デメリットとしては、勝手にプラグが抜けてしまったり、プラグが涙の通り道に入り込んで出てこなくなることなどが挙げられます。
アテロコラーゲン注入
涙の通り道にコラーゲンの塊を入れる手術療法です。
涙の排出口に異物(涙点プラグ)を入れることに抵抗がある場合などに用いられます。
コラーゲンはしばらくすると溶けて流れてしまうため、繰り返し行う必要があります。
涙点閉鎖
涙の通り道を焼く、もしくは縫ってふさぐ手術療法です。
確実に涙の流れをせき止めることはできますが、元に戻すのは難しくなります。
そのため、涙点閉鎖をするか否かは慎重に判断する必要があります。
マイバム圧出
上下のまぶたを専用のピンセットなどで挟み、マイボーム腺の脂詰まりを解消する治療法です。
ドライアイの患者は、月に一回程度行うことが推奨されています。
LipiFlow
専用の装置によって、目を温めてマッサージする治療法です。
熱と圧力をまぶたに加えることにより、マイボーム腺の詰まりを解消する効果が期待できます。
IPL(Intense Pulsed Light)
インテンスパルスライトという光エネルギーをこめかみや頬、鼻などに照射する治療法です。
マイボーム腺の脂を溶かしたり、炎症を抑えたりする効果が期待できます。
マイバム圧出やLipiFlow、IPLを行っている医療機関は、「LIME研究会※」のサイトで確認できます。
残念ながら、現時点の医療技術において、ドライアイを完治させるのは難しいとされています。 とはいえ、前述したとおり、ドライアイの患者は国内だけでも2000万人以上と非常に多いため、今後も加速度的に研究が進んでいき、やがては完治可能な疾患となるのは間違いないといえます(私がお世話になっている眼科の先生もおっしゃっていました)。 また、ドライアイ研究の第一人者である有田玲子医師は、自身のYouTubeチャンネルで以下のように述べています(一部抜粋)。
- 世界では、このマイボーム腺機能不全、油不足のドライアイに対しまして、いろいろな治療薬やいろいろな医療機器、そういったものがどんどん開発されています。
- 日本でも複数の治験、臨床研究が行われています。
- 「良いサイクル」にさえ入っちゃえば、なんだったら薬をやめられるところまで持ち込めるんですよ。
参考
- 平松 類;蒲山 順吉.『本当は怖いドライアイ -「様子を見ましょう」と言われた人のために』.時事通信社,2017.
- 加藤 浩晃.『2022-2023年 改訂5版 眼科点眼薬Note: ジェネリックがわかる! 市販薬もわかる!』.メディカ出版,2022.
- 公益社団法人 日本眼科医会|ドライアイに悩む方へ―生活の注意と治療の目安―
- LIME研究会|最新のMGD治療