本記事では、良い習慣の始め方や継続の仕方、習慣がもつ力、良い習慣と悪い習慣の違いなどをお伝えします。
習慣の力
私たちの生活の大半は、「習慣」によって成り立っています。
習慣とは、「日常の決まりきった行動」のことです。
もっと厳密にいうと、「あることを繰り返し行った結果、いつもそうするのが当たり前のようになったこと」です。
この「習慣」とは、過去の自分が「何かを得るためにとった行動」のうちのひとつです。
たとえば以下のような具合です。
- 健康になりたいから運動をする
- 楽しみたいからゲームをする
- 口の中をスッキリとさせたいから歯を磨く
- 心地よくなりたいから飲酒・喫煙をする
- 疲れたくないから運動をしない
その行為をする(もしくはしない)ことは、「自分のためになる」と意識的または無意識的に判断したために「習慣」として定着したのです。
「良い習慣」「悪い習慣」などというように、習慣は益にも害にもなり得ます。
その人の健康状態や容姿、学業の成績、経済力、人間関係など、人生における重要な要素の大部分が、これまでの習慣を基に形成されているといっても過言ではありません。
よって、日々の習慣を見直し、「良い習慣」を取り入れていくことで、QOL(生活の質)の大幅な向上が期待できます。
以下で詳しくみていきましょう。
すぐに幸福感を味わえる「悪い習慣」
良い習慣を身に付けるためには、「良い習慣」と「悪い習慣」の違いを理解し、自分が取り組むべきことを明確にする必要があります。
まずは、「悪い習慣」についてみていきましょう。
悪習の主な特徴は次のとおりです。
- 心身に悪影響を及ぼす
- 後になって人生を狂わせる
- 一時的な幸せ(満足感)をすぐに得られる
私たちは、日々の習慣によって何かしらの報酬を得ています。
この「報酬」は、以下の2つに分けることができます。
- 即時報酬
- 遅延報酬
悪い習慣の多くは、即時報酬を得るための行動だといえます。
即時報酬とは、その名のとおり「すぐに手に入る報酬」のことです。
即時報酬の多くは、「興奮」や「快楽」「心地よさ」などの感情をともないます。
たとえば以下のようなことが該当します。
- 長時間の動画視聴・ゲーム・SNSなど
- 不規則な生活
- 暴飲暴食
- 飲酒・喫煙
- 運動不足
- ハードすぎる運動
- 陰湿な行為(いじめや差別など)
- 浪費
これらの行動を続ければ続けるほどに、幸福度が低下する可能性が増えていきます。
動画やゲームといった「非生産的なこと」に費やす時間が増えれば増えるほどに、無気力な生活に陥る危険性が増えるほか、「社会的孤立」などを招くおそれもあります。
ドカ食いや飲酒・喫煙などは、長く続ければ、多くの場合は糖尿病などの病気を招きます。
その他の悪習も、強烈なブーメランとなって後の自分を苦しめる要因となり得ます。
いっときの「癒やし」や「充足感」を与えてくれるこれらの行動が習慣化している場合は、できるだけ早く生活から排除しましょう。
遅れて幸せを呼び込む「良い習慣」
「良い習慣」の主な特徴としては、以下のようなことが挙げられます。
- 人生を豊かにする
- 心身に良い影響を与える
- 時につらい
悪い習慣を「即時報酬」とよぶのに対し、良い習慣のことを遅延報酬とよびます。
遅延報酬とは、「手に入れるまでに長い時間を要する報酬」のことです。
たとえば、高度な知識や技能、丈夫な心身、信頼、資産、資格などが該当します。
遅延報酬を得るための行動としては、以下のようなものがあります。
- 専門分野の研鑽(勉強やトレーニングなど)
- 規則正しい生活
- ヘルシーな食事
- 適度な運動
- ストレス発散(趣味など)
- 良質なコミュニケーション
- 資産運用
- 読書
時には「つらさ」や「退屈さ」を感じることもあるこれらの行動は、長い目で見れば人生に多くの益をもたらしてくれます。
良い習慣の始め方
良い習慣を始めるステップは次のとおりです。
- 欲求を明確にする
- 「いつ・どこで・何を・どれだけ」するかを明確にする
- 行動を起こす「きっかけ」を最適化する
- 計画を修正しつつ行動する
- 継続する
欲求を明確にする
良い習慣は「人それぞれ」といえます。
なぜなら、前述した「報酬」は、人によってまったく異なるからです。
まずは自分にとっての「報酬」を定義しましょう。
自分が「欲するもの」が明確になれば、「やるべきこと」が見えてきます。
たとえば次のとおりです。
欲求 | やるべきこと(自分にとっての良い習慣) |
---|---|
看護師になりたい | 勉強をする 学費をためる 学校の情報を集める |
不眠症を治したい | 就寝と起床の時間を固定化する 日光を浴びながら散歩をする 病院でもらった薬を飲む |
筋肉をつけたい | 筋力トレーニングをする たんぱく質を多くとる しっかりと眠る |
「いつ・どこで・何を・どれだけ」するかを明確にする
すべきことが明確になったら計画を立てましょう。
とはいえ、この段階で「完璧な計画」を立てようとしてはいけません。
なぜなら、まだ一度も行動したことがない段階で完璧な計画を立てることは不可能だからです。
それに、計画の内容にこだわりすぎるあまり、行動を始める時期がどんどん先延ばしになってしまうことも考えられます。
100点満点中「50点」くらいの計画を手早くつくってしまいましょう。
計画を立てる際は、「いつ(時刻)・どこで(場所)・何を(行動)・どれだけ(作業量)」するかを明確にしましょう。
そうすることで、行動のたびにいちいちこれらを決める必要がなくなり、「決断疲れ※の予防」や「作業時間の増加」といったメリットを享受することができます。
「何をするか」は、前のステップではっきりとしているので、その行動を「いつ・どこで・どれだけ」するかを考えましょう。
たとえば以下のような具合です。
いつ | どこで | 何を | どれだけ |
---|---|---|---|
20時になったら | 自室の机で | 問題集を | 5ページやる |
朝食後に | 近所の公園で | ウォーキングを | 30分間行う |
起床後と就寝前に | キッチンで | プロテインを | 1スクープずつ飲む |
「いつ(時刻)」と「どこで(場所)」は、その作業を行うのに最適だと思う時間帯と作業スペースを選びましょう。
「どれだけ(作業量)」に関しては、少し工夫が必要です。
やることが有酸素運動などの「一定のペースで行うのが望ましい作業」の場合は、作業量に「30分間」といった時間を設定するだけでもよいでしょう。
しかし、勉強などの知的作業の場合は、できれば「制限時間」と「ノルマ」を設定するようにしましょう。
たとえば、1時間の間に問題集を5ページやる、といった具合です。
ノルマを達成したら、残りの時間は休憩を兼ねた「自由時間」にするとよいでしょう。
このようにすることで得られるメリットは以下の2つです。
- ダラダラと時間だけを消費することを防げる
- 生産性や集中力、モチベーションなどが向上する
ダラダラと時間だけを消費することを防げる
極論すれば、「どれだけ(作業量)」に「時間」のみを設定した場合は、問題集を眺めていても目標は達成できます。
なぜなら、何をしていても時間は経過するからです。
しかし、明確な「制限時間」と「ノルマ」があれば、ダラダラとしているわけにはいきません。
生産性や集中力、モチベーションなどが向上する
ノルマを達成した時点で作業時間は終了となるため、「とっとと終わらせてしまおう」という思考になり、結果的に生産性や集中力が向上しやすくなります。
また、大変な作業の後に「自由時間」が待っているとなれば、おのずとモチベーションも上がるはずです。
注意点としては、ノルマを厳しくしすぎない、ということです。
作業中、常に頭をフル回転させなければ達成できないようなノルマでは、作業に取りかかる際の精神的ハードルが上がるため、挫折につながりやすくなります。
作業に集中して取り組めば、制限時間の1/4程度の自由時間を確保できるノルマ(制限時間が1時間の場合は、15分程度)がベストだと思います。
行動を起こす「きっかけ」を最適化する
味覚や嗅覚、触覚といった私たちが持つ感覚のなかで、もっとも強力な感覚は視覚です。
現在の通説では、ヒトの五感による知覚の割合は、およそ8割が視覚だといわれています。
私たちは無意識のうちに視覚に頼って生きているため、周囲の環境によって行動が促されたり、抑えられたりします。
たとえば以下のような具合です。
- 目の前の机の上にスマートフォンがある→スマートフォンを手に取り、SNSをチェックする
- ギターが押し入れの奥にしまってある→ギターのことを考えもしない
こういった当たり前ともいえる「視覚と行動の関係性」を利用すると、良い行動を多くし、悪い行動を少なくすることができます。
具体的な方法は次のとおりです。
- 習慣化したい行動の「きっかけ」を目立たせる
- やめたい行動の「きっかけ」を見えなくする
たとえば、以下のような具合です。
- ピアノを弾けるようになりたい(きっかけ=ピアノ)→ピアノを部屋のもっとも目立つ場所に配置する
- 暇さえあればスマートフォンを見てしまうクセを直したい(きっかけ=スマートフォン)→必要なとき以外は、スマートフォンを別の部屋に置いておく
実にシンプルな方法ですが、そこに「きっかけ」があるのとないのとでは、行動を起こす可能性が大きく違ってきます。
また、きっかけを置く場所だけではなく、きっかけの状態も重要となります。
前もってきっかけの「状態」を整えておけば、よりスムーズに行動に移せるようになります。
具体例としては次のとおりです。
- ピアノの鍵盤蓋を開けておく→ピアノを弾く際にいちいち鍵盤蓋を開ける必要がなくなり、スムーズに練習を開始できる
- スマートフォンの電源を切っておく→電源を入れないとスマートフォンを使用できなくなり、結果的に使用頻度が減る
ようは、良い習慣に対しては「抵抗※」を減らし、悪い習慣に対しては「抵抗」を増やす、ということです。
そうすることで、良い習慣は多く、悪い習慣は少なくすることができます。
以上のように、良い習慣と悪い習慣を引き起こす「きっかけ」の「配置場所」と「状態」を最適化し、良い習慣を継続できる環境をつくりましょう。
計画を修正しつつ行動する
環境が整ったら、いよいよ行動です。
まずは、先につくっておいた計画(いつ・どこで・何を・どれだけやるか)に沿って行動していきます。
すると、計画に無理のあるところや、もっと作業量を増やせるところなどが出てくると思うので、それらを修正しつつ行動しましょう。
前述したとおり、いきなり「完璧な計画」を立てることはできません。
「修正↔行動」を繰り返すことで、徐々に理想的な習慣は構築されていきます。
その時々での「ベストな計画」に沿って作業をこなしつつ、時折「修正できるところはないか」と考えてみるようにしましょう。
継続する
習慣形成でもっとも難しいステップが「継続」です。
悪い習慣は意識せずとも定着しやすいものですが、良い習慣はそう簡単に定着してはくれません。
とくに、新しい習慣を始めて間もないころは、ひょんなことをきっかけに、いともたやすく習慣は崩れてしまいます。
それでは、挫折のリスクを減らすにはどうすればよいのでしょうか。
以下で考えていきましょう。
良い習慣を継続させる方法
良い習慣を継続させるためには、以下の2つを理解するのが効果的です。
- 継続できない理由
- 継続するコツ
この2つを知っておくことで、挫折のリスクを大幅に減らすことができます。
継続できない理由
挫折の理由はさまざまですが、ありがちなケースとしては次のようなものが考えられます。
- 一度習慣が途切れてから動けなくなった
- 成長を感じられない
- 行動が無意味に感じる
- 誘惑に勝てない
- スケジュールに無理がある
一度習慣が途切れてから動けなくなった
ある行動を習慣化しようと毎日頑張っていたものの、さまざまな理由で一定期間途切れてしまい、そのままやらなくなる、ということは往々にしてあります。
その理由としては、習慣を途切れさせたことによる罪悪感や「せっかくできるようになったことが、できなくなっているのではないか」というおそれなどが考えられます。
「小さな例外」を認めてしまったばかりに、これらの負の感情が心に現れ、それから逃れるために、無意識に「挫折」という道を選んでしまうのです。
ゆえに、良い習慣を継続するうえで、「例外の日(習慣を崩す日)」をできるだけつくらないことが重要となります。
とはいえ、生きていれば冠婚葬祭や病気、旅行などで、どうしても習慣が途切れてしまうタイミングは来ます。
そのようなときに重要となるのは、「最短で立て直す」という思考です。
たとえば、インフルエンザにかかり、どうしても動けなくなった場合、数日後に回復したタイミングですぐに習慣を再開する、といった具合です。
日頃から、「習慣が崩れたらできるだけ早く再開する」と心がけておき、いざ習慣を再開するときはあれこれ考えず、ある種の思考停止をして、素早く習慣を再開するようにしましょう。
単発的に習慣が途切れることは大きな問題ではありません。
問題となるのは、習慣が途切れた後に、惰性的に行動をしなくなることです。
このことを頭の片隅に置いておき、習慣が途切れた際は淡々と立て直してください。
成長を感じられない
毎日頑張って良い習慣に取り組んでいても、なかなか成長を感じられない場合、モチベーションは低下しやすいです。
そこで重要となるのは、「成長曲線」を理解し、長い目で見る、ということです。
「成長曲線」とは、成長するペースのことです。
人が何かを習得しようとした際、成長のペースは一定ではなく、必ず「停滞期間」が存在します。
この停滞期間のことを、習慣術の専門家であるジェームズ・クリアー氏は「潜在能力のプラトー※」と名付けました。
潜在能力のプラトーは、大きく飛躍する前に存在し、この期間はいくら努力をしても成長を実感できません。
ゆえに、もっとも挫折しやすい期間ともいえるでしょう。
潜在能力のプラトーのなかでも愚直に行動をし続けられた人だけが、大きな報酬を得られるのだと思います(参考記事:今からベストを尽くす【やり直しがきかない人生における最善策】)。
突き抜ける前(大きく飛躍する前)には停滞期間が存在する、ということを理解し、長い目で行動するようにしましょう。
行動が無意味に感じる
理想と現実の差がありすぎると、いくら良い行動だとわかっていても無意味に感じてしまうことがあります。
そのようなときは、現在の状況ではなく、現在の軌道(習慣の先)に目を向けるようにしましょう。
たとえば、理想の体重が45kgで、現在は80kgあるとします。
体重を約半分にしなければならないこの状況は、「目標までの道のりが長い」といえます。
しかし、だからといって節食や運動が無意味になることはあり得ません。
このようなときは、目標までの道のりが長いという「現状」を受け入れ、「軌道」に目を向けるようにしましょう。
極論すれば、現状なんてどうでもよく、現在の習慣の先に理想の自分がいるかどうかが重要なのです。
そして、軌道が正しい方向を向いていると思えたのなら、現状を悲観したり、絶望したりせず、目の前のやるべきことを淡々とやっていくことが大事なのだと思います。
誘惑に勝てない
悪い習慣を起こす「きっかけ」が自分の周囲にあればあるほど、誘惑に負けてしまう可能性が増します。
先に述べたように、この悪習を始めるきっかけとなるものをできるだけ目立たなくすることが、良い習慣を続けるうえで重要となります。
たとえば、勉強習慣を身につけたいのにゲームをしてしまうのなら、ゲームが終わるたびにゲーム機本体をクローゼットにしまうようにする、といった具合です。
自制心はまったく当てになりません。
行動を起こす際に、自制心に頼る必要のない(自然と良い習慣を行える)環境をつくることを心がけましょう。
スケジュールに無理がある
いちばん最初に立てた計画は、たいてい無理のあるものである場合がほとんどです。
なぜなら、最初はモチベーションがMAXの状態のため、できるだけ多くの時間をそのことに割こうとするからです。
ただ、高いモチベーションはそう長く続くものではないため、いずれ動くのが億劫になってしまう可能性が高いといえます。
スケジュールを立てる際は、睡眠時間や休憩時間が十分に確保された、無理のない内容にするよう心がけましょう。
また、作成したスケジュールに無理のある部分がないかをこまめにチェックし、適宜修正することも重要です。
継続するコツ
- 小さく始める
- ノルマは「不十分」と「過剰」の間に設定する
- ちょうどよい難しさ(能力ギリギリ)のことに挑戦する
- 優先度順に行う
- やる気が起きないときは、数秒間だけやる。それも無理ならやらない
- 日々の成果を「見える化」する
- 元日や朔日に始める
小さく始める
何事も始めたばかりの頃は、行動を起こすのに労力が必要となります。
その状態で「大きなこと」をやろうとした場合、気合で数日間はできたとしても、いずれ息切れしてしまうでしょう。
そうなるのを避けるために、新しい習慣を始めてしばらくは、理想のノルマ(作業量)の10分の1程度をこなすことを目標にするとよいでしょう。
たとえば、最終的にウォーキングを1時間できるようになりたい場合は、家の近所を6分間歩くことから始める、といった具合です。
このようにノルマを意図的に小さくすることで、前述した行動を起こす際の「抵抗」が少なくなり、行動を起こすのにエネルギーが必要な時期でも、小さいながらも着実に継続できるようになります。
ノルマは「不十分」と「過剰」の間に設定する
ある程度習慣が定着してきたら、段階的にノルマを増やしていきましょう。
最終的なノルマは、「不十分」と「過剰」の間がベストです。
なぜなら、「不十分」だとやる意味が薄く、「過剰」だと健康面や精神面に悪影響を及ぼすからです。
ある程度成長や進歩を感じるが、強い疲労感や精神的負荷を感じない、というレベルのノルマを設定しましょう。
また、どうしてもやる気が起きない日や、体調の悪い日を考慮して、最低限のノルマを設定することも重要です。
このノルマは、「最低限の『やった感』を味わえる低いノルマ」にするのがコツです。
ようは、ギリギリモチベーションを維持できるノルマを設定する、ということです。
時間的には、10分以内に終わる内容で十分でしょう。
たとえば、勉強なら1〜5問、読書なら1〜5ページ、ピアノなら1〜3曲、といった具合です。
モチベーションが低くて動けない、もしくは体調がすぐれないといった日は、この「最低限のノルマ」をこなすことを目標としましょう。
そうすることで、小さく習慣をつなぎ留めておくことができ、挫折するリスクを減らすことができます。
ちょうどよい難しさ(能力ギリギリ)のことに挑戦する
人は、「ちょうどよい難しさのこと」に取り組むとき、最高のモチベーションやパフォーマンスを得られます。
このことは、「ヤーキーズ・ドットソンの法則」として知られており、何かを行う際に、「適度なストレス(難易度など)」があったほうが注意力が高まり、結果的に作業効率が高まる、とされています。
よって、簡単すぎるノーストレスの作業や、今の自分には難しすぎる作業は控えるのが懸命です。
作業内容は、いわゆる「ちょいムズ」がベスト、ということを覚えておきましょう。
優先度順に行う
「ビッグロックの法則」という有名なたとえ話があります。
その内容は次のとおりです。
まずは、ツボに大きな岩を入れられるだけ入れます。 次に、隙間を埋めるように石を入れられるだけいれていきます。 その後、砂利→砂→水と順番に入れていき、完全に隙間を埋めてしまいます。 そして、ツボに収まった岩・石・砂利・砂・水を一度取り出し、今度は逆の順番(水→砂→砂利→石→岩)でツボに戻していきます。 すると、石や砂が邪魔をし、さっきは収まっていたはずの岩がツボに入らなくなってしまうのです。
このたとえ話は、物事には適切な順番がある、ということを説いています。
最初に「些末なこと」にばかり注力してしまうと、「重要なこと」に割くエネルギーや時間がなくなってしまう、ということです。
この考え方は、「タスクの効率化」において役に立ちます。
作業の最後のほうは、集中力が低下している場合が多く、そのような状態で重要なタスクをこなすのは望ましくありません。
そこで、あらかじめやるべきことに優先度を割り振っておき、重要なタスクから順にこなしていくようにしましょう。
そうすることで、重要なタスクの生産性が上がり、より効率的に作業を進めていくことができます。
まずは、もっとも重要なタスク(=岩)に取りかかり、次に中くらいに重要なこと(=石や砂利)を済ませ、最後に重要度の低いこと(=砂や水)をする、ということを心がけ、日々の習慣を効率化していきましょう。
やる気が起きないときは、数秒間だけやる。それも無理ならやらない
良い習慣に励もうとしても、なかなか動くことができない日もあるかと思います。
そのようなときは、数秒間だけ行動してみましょう。
読書だったら1〜3行程度読む、ウォーキングだったら準備運動をする、勉強だったら問題文を読む、といった具合です。
人には始めた行動を続けようとする習性(作業興奮)があるため、うまくいけばそのまま作業を続けられます。
なんとか作業を開始できたら、まずは、前述した「最低限のノルマ」をこなすことを目指しましょう。
その後、気分が乗ってきたようなら、「普段のノルマ」も勢いで終わらせてしまいましょう。
人は始めた行動を続けやすい、始めることさえできれば何とかなることが多い、という事実を頭の片隅に置いておくだけでも、行動の入り口でつまずく可能性が減ります。
行動の入り口を制するには、数秒間だけでも動くことが重要、ということを覚えておいてください。
とはいえ、人間はロボットではないので、どうしても動けないときはあります。
そのような日は潔く諦めましょう。
いやいや行動したところで、その行動に対する負の感情(「面倒くさい」「やりたくない」といった感情)が強化されるだけです。
習慣を途切れさせた日は、できれば有益なこと(掃除や洗濯、布団干し、散歩、筋力トレーニングなど)を1つ以上することをおすすめします。
そうすることで、習慣を途切れさせた引け目などを感じにくくなり、翌日からスムーズに習慣を再開できる可能性が高まります。
とはいえ、これらは「どうしても動けない日」にやむなくとる代替行動なので、長期に渡って「動けない日」が続く場合は、その行動の必要性を自分に問いかけてみるようにしましょう。
そうすることで、日々の行動をふるいにかけ、ムダな努力(本当は不要な行動)を生活から排除し、必要な努力を再確認することができます。
日々の成果を「見える化」する
その日のノルマを達成した、ということを見える化(記録)しておくことは、モチベーションを保つうえで有効です。
タスク完了後にカレンダーに印を付ける、もしくは、SNSや日記に「〇〇完了」などと書き記すだけでもよいでしょう。
どのような形であれ、ノルマを達成したということが記録されていれば、途切れたときに「気持ち悪さ」を感じるようになります。
その「気持ち悪さ」を回避するために、半強制的に習慣を続けられるようになります。
元日や朔日に始める
新しい習慣は、元日や
なぜなら、区切りのよい日は「新たな行動」へのモチベーションが上がりやすく、スムーズなスタートを切れる可能性が増すからです。
さらには、習慣の「継続期間」を容易に把握することができるようになるため、「途切れさせたくない」という心理がより強くはたらきやすくなります。
目先の誘惑にとらわれず、良い習慣にとりかかることが重要、とわかっていてもなかなかできないのが人間なのだと思います。 かくいう私も、これまで新しい習慣を始めては挫折し、を延々と繰り返してきました。 本記事で取り上げた「継続できない理由」や「継続するコツ」を理解し、スケジュールやノルマ、作業内容などをアップデートしながら行動したことで、最近ではようやく自分にとっての良い習慣が定着してきたように感じます。 何事も最初はうまくいかないものですが、「習慣形成」も同様です。 いきなり良い習慣が定着することはまれで、大抵の場合は「ああでもない、こうでもない」と試行錯誤をすることによって、少しずつ身についていくのだと思います。 ぜひあなたも、自分のペースで良い習慣を身につけていってください。
参考
- James Clear.『ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣』.牛原 眞弓訳.パンローリング株式会社,2019.
- Greg Mckeown.『エフォートレス思考 努力を最小化して成果を最大化する』.高橋 璃子訳.かんき出版,2021.