本記事では、朝型生活のメリットや実践方法、注意点、朝のおすすめ習慣などをお伝えします。
人生を好転させる「朝型生活」
「人生において重要なこと」は人それぞれですが、多くの人にとって重要となることには次のようなものがあります。
- 健康で若々しい体の維持(アンチエイジング)
- メンタルの安定
- 充実した生活(夢・目標への努力など)
これらを得るうえで、「基本」となり得る生活スタイルが「朝型生活」です。
昨今の「朝活」ブームなども相まって、早起きをして自己研鑽や健康づくり、趣味などに励む人が増えてきました。
しかし、「夜ふかしをする→早起きをする→適当に気分が上がることをする」といった具合に、「睡眠時間の確保」や「やることの設定」をおざなりにしていては、せっかくの早起きが意味を成さなくなるばかりか、健康を害する原因にもなりかねません。
朝型生活は、「適切な実践方法」や「注意点」を理解したうえで行えば、心身の健康や美容、QOL(生活の質)などの維持・向上に大きく貢献します。
以下で詳しくみていきましょう。
朝型生活のメリット
朝型生活の主なメリットは次のとおりです。
- 生産性が向上する
- 病気・体調不良のリスクが減る
- メンタルが安定しやすくなる
- 老化を抑制できる(美肌効果など)
- 肥満の防止につながる(スタイルの維持)
生産性が向上する
朝目覚めてからの「約3時間」は、もっとも「集中力」や「生産性」が向上する時間帯とされています。
その理由としては、次のようなものが考えられます。
- 睡眠によって脳がクリアになっている
- 睡眠によって前日の疲労が回復している
- セトロニンやドーパミン、アドレナリンなどが多く分泌され、やる気が起きる
- 起床直後であるため、眠気が生じにくい(十分な睡眠時間の確保が必須)
- ほかの時間帯に比べ、目や肩、腰などの疲れを感じにくい
ほかの時間帯では難しく感じるようなタスクも、朝に行えばあっさり処理できるかもしれません。
この脳にとっての「ゴールデンタイム」をうまく活用できるか否かによって、後の人生に大きな違いが生じてくるのは間違いないでしょう。
病気・体調不良のリスクが減る
睡眠不足や夜ふかしは「万病のもと」です。
不適切な睡眠を繰り返すことで、生活習慣病や心疾患、高血圧などを招くとされています。
くわえて、自律神経機能やホルモン分泌などにも大きな影響を及ぼします。
「睡眠と健康の関係」について、詳しくは以下の記事を参照してください。
関連記事:健康・美容・脳機能の維持に欠かせない「睡眠」【睡眠不足が招く弊害とその解消法】
メンタルが安定しやすくなる
不適切な睡眠は、体だけでなくメンタルにも悪影響を及ぼします。
寝不足になると、意欲・集中力・注意力の低下や記憶力の減退、日中の強い眠気などが生じやすくなり、日常生活に支障をきたす場合もあります。
慢性的な睡眠不足が続くと、うつ病や統合失調症などと同様の脳機能の変化が起こり、不安や混乱、抑うつ傾向が強まることがわかっています。
また、睡眠不足になると、「アミロイドβ」という認知症の原因物質が脳内に蓄積されるようになり、認知症の発症リスクが高まることもわかっています。
老化を抑制できる(美肌効果など)
睡眠不足や夜ふかしは、老化や肌荒れの原因となります。
睡眠不足は、老化の主な原因である「糖化」と「酸化」を促進する作用があり、シミやシワ、たるみ、くすみ(黄ばみ)、白髪、脱毛などを招くおそれがあります。
また、不規則な睡眠は、肌のターンオーバーを乱す原因となり、ニキビなどの肌トラブルを招く原因にもなります。
肥満の防止につながる(スタイルの維持)
ヒトの体が睡眠不足に陥ると、食欲を抑える「レプチン」というホルモンが減少すると同時に、食欲を増す「グレリン」が増えるため、食べすぎを招く可能性が高まります。
また、夕方から深夜にかけて、体内では脂肪の合成を促すはたらきのある「
「夜食をとる=Bmal1が増えた状態で食事をとる」ということにほかならず、このことも肥満を招く大きな要因となります。
朝型生活の実践方法
勉強や運動と同様、「朝型生活」も三日坊主で終わりやすい習慣だといえます。
その理由としては、朝に起きるのがつらい、ということが挙げられます。
では、なぜ朝に起きるのがつらくなるのでしょうか。
そのもっとも大きな原因は「睡眠不足」です。
当然ながら、十分に睡眠時間をとれていれば、朝に無理なく起きられる可能性が高まります。
そのため、無理なく早く起きられるかどうかは、前日の行動(就寝時刻)でほぼ決まっているといえます。
早く寝る(=早く起きる)ために必要なことは、次のとおりです。
- 朝日を浴びる
- トリプトファンを多く含む食品をとる
- 有酸素運動をする
- 適度に疲れる(日中に脳や体を適度に使う)
- 就寝時刻の1時間30分前に入浴する(湯船につかる)
- 起きたい時刻の7〜8時間前に眠りにつく
- エアコンや加湿器を有効活用し、睡眠中または起床時の室温・湿度を最適化する
- 就寝時刻と起床時刻を固定化する
眠りを誘う脳内物質である「メラトニン」は、「セロトニン」という神経伝達物質からつくられます。
朝日を浴びたり、トリプトファンを多く含む食品を食べたり、有酸素運動をしたりすることは、セロトニンを増やすうえで重要となります。
また、日光浴や食事、軽い運動などには、「体内時計」をリセットする作用があります(ヒトは体内時計がリセットされてから、約14〜16時間後に眠気を感じます)。
ヒトは体温が急激に下がると眠たくなります。
そのため、就寝時刻の約1時間30分前に入浴によって一時的に体温を上げておくと、スムーズに入眠できる可能性が高まります。
夏は暑くて睡眠の質が落ちやすくなる一方で、冬は寒くて布団から出るのがおっくうになりがちです。
そのため、エアコンなどを有効活用し、睡眠中と起床時に快適な室温を維持することは、「良質な睡眠」と「早起き」には欠かせない要素だといえます。
また、エアコンの使用にともなう空気の乾燥を和らげるために、加湿器を併用するのもおすすめです(季節に関係なく、エアコン使用時には加湿器を使うことをおすすめします)。
「早寝早起き」ができるようになってきたら、可能な限り就寝時刻と起床時刻を固定するようにしましょう。
そうすることで、よりスムーズに入眠・起床ができるようになります。
朝型生活の注意点
朝型生活を送るうえで、注意すべき点は以下のとおりです。
- 睡眠時間を削らない
- 心拍数の上がる運動は避ける
- 空調を管理する
- こまめに水分補給をする
- 早起きできないときは無理をしない
睡眠時間を削らない
朝にしっかりと脳をはたらかせるためには、十分な睡眠時間を確保する必要があります。
必要な睡眠時間は年齢などによって異なりますが、目安としては、「7〜8時間程度」です。
「睡眠」は心身の健康や美容にとって不可欠な要素であり、睡眠時間を削って早起きをすることは、体を痛めつける行為そのものです。
「早起きがよい」のではなく、「しっかり眠ったうえで、早起きをするのがよい」ということを覚えておきましょう。
心拍数の上がる運動は避ける
朝は心筋梗塞や脳卒中を発症しやすい時間帯とされています。
また、起床時の体温は一日のうちでもっとも低く、このような状態で運動をすることは、ケガのリスクを増やす原因にもなります。
病気やケガを予防するうえで、起き抜けに心臓や血管、筋肉などに負担をかける運動は行わないようにすることが重要となります。
起床直後は、筋力トレーニングやランニングなどの「激しい運動」はもちろんのこと、ウォーキングやジョギングといった「軽めの運動」も控えたほうがよいでしょう。
ヒトは食事をとることで体温が上昇します。
そのため、朝に運動習慣を取り入れる場合は、朝食後にウォーキングなどの軽い運動をすることをおすすめします(食後の運動は、肥満などを予防する効果も期待できます)。
激しい運動は、もっとも体温が高くなる時間帯である「夕方」に行うとよいでしょう。
朝は体をいたわりつつ行動する、という意識をもつようにしましょう。
空調を管理する
冬場の朝は気温が低く、起き抜けの体には過酷な環境だといえます。
このような時期に急に布団から出ると、寒暖差によって心臓や血管に負担がかかり、前述した心筋梗塞などを発症する要因となります。
そのため、エアコンタイマーなどを使い、起床時の室温を調整する必要があります。
また、部屋の二酸化炭素濃度が高いと集中力が低下するとされています。
そのため、「室温管理」にくわえて、「部屋の換気」も重要となります。
窓を開けて換気する場合は、1時間に5〜10分程度、2ヶ所の窓を5〜15cmほど開けることが推奨されています(快適と感じる室温を確保できる範囲で行いましょう)。
また、換気機能が付いたエアコンを使用することも有効です。
こまめに水分補給をする
知的作業の前に水を飲むことで、集中力が高まることがわかっています。
また、睡眠中は発汗などによって体内の水分が蒸発するため、脱水症状を防ぐうえでも「起床後の水分補給」は必要となります(就寝前にも水分を補給しましょう)。
ただし、一度に多量の水を飲むことは、「低ナトリウム血症」や「水中毒」などを招く原因となります。
また、ヒトが一度に吸収できる水の量は、コップ1杯程度(200〜250ml)とされています。
以上のことから、安全かつ効率的に水分を摂取するためには、コップ1杯程度の水を数回に分けてとることが望ましいといえます。
早起きできないときは無理をしない
早起きするのがつらいときは、無理に起きるべきではありません。
というのも、早起きできないのには必ず理由があり、前述した「睡眠不足」のほか、「病気」の可能性なども考えられるからです。
病気のなかには、朝に起きるのがつらくなる、もしくは、睡眠の質が低下する(=睡眠時間が短くなる)ものが存在します。
早起きがつらくなる可能性のある病気には、次のようなものがあります。
- 起立性調節障害
- 概日リズム睡眠障害(睡眠相後退症候群など)
- 精神疾患(うつ病・統合失調症・不安障害など)
- 睡眠時無呼吸症候群
- レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)
- 周期性四肢運動障害
上記のような病気にかかり、朝に起きるのがつらい場合は、朝型生活に挑戦する前に病気を治す、または寛解させることをおすすめします。
睡眠障害を抱えている場合、いくら早く布団に入っても、「実質的な睡眠時間」が短くなるため、必要な睡眠時間を確保できていない可能性があります。
「早く寝ても起きるのがつらい」「夜間に何度も目が覚めてしまう」といった場合は、睡眠障害専門外来や内科、精神科、心療内科などを受診しましょう。
そして、適切な治療を受け、症状が軽快・消失した後に、朝型生活に挑戦するとよいでしょう。
朝のおすすめ習慣
ただ早寝早起きするだけでも、心身にとっては十分に良い効果が期待できます。
しかし、生活(人生)をより良いものにするためには、「朝に何をするか」がとても重要となってきます。
おすすめの「朝にやること」は次のとおりです。
- 重要かつ難解なこと
- 自律神経を整える行動
- 趣味や交流
重要かつ難解なこと
脳がクリアになる朝には、「自分の人生にとってもっとも重要で、なおかつ頭を使うこと」をするのがおすすめです。
たとえば、「創作活動」や「勉強」といった「夢の実現やスキルアップに必要となる行動」や、高い集中力を要する「仕事上の難解なタスク」などが考えられます。
ただし、脳が冴えている朝であっても、あまりにも多くのタスクを処理していては、集中力が持ちません。
そのため、朝にやることは「3つ以内」にとどめるのがベストです。
朝にやるべきことが複数ある場合は、それらに順位をつけ、重要なことから順に行うとよいでしょう。
「集中力が切れた」と感じたら、読書や日光浴などでリフレッシュすることをおすすめします。
緊急度が低く、あまり集中力を要さない雑務(メール返信など)は、できる限りほかの時間帯に行うようにしましょう。
自律神経を整える行動
朝につくられた自律神経のバランスは、長時間持続するといわれています。
そのため、瞑想や座禅、ヨガなどの「自律神経を整える行動」もおすすめです。
朝に意識的に自律神経を整えることで、その日一日を穏やかな心で過ごせる可能性が高まります。
趣味や交流
ほかにも、趣味を満喫したり、習い事を始めたり、家族や友人と触れ合ったりするのもおすすめです。
また、苦痛でなければ、朝活コミュニティ(サークル)などに参加してみるのもよいかもしれません(ただし、ランニングなどの激しい運動をするようなコミュニティはおすすめしません)。
「趣味の満喫」や「人との交流」は、直接的に人生に大きな充足感を与えてくれる素敵な習慣だと思います。
「朝型(人間)」や「夜型(人間)」という言葉を一度は耳にしたことがあると思います。 これは「クロノタイプ(日周指向性)」といって、「個人が一日の中で、どの時間帯にもっとも活動的であるか」を示す時間的特性であり、大別すると、朝型・夜型・中間型の3つに分けられます。 「クロノタイプ=生まれ持った体内時計」であり、遺伝的要素が大きく関わっているため、夜型から朝型に変わることはできない、との見解が多くみられます。 真偽のほどは定かではありませんが、私個人の意見としては、夜型から朝型に変わることは「可能」だと考えます。 もう少し正確にいうと、朝型や夜型といったクロノタイプは変えられなくとも、朝型の生活を苦痛なく行えるようになることは可能だと考えます。 というのも、以前の私は「夜中の2〜3時ごろに寝て10時ごろに起きる」という完全な夜型人間でしたが、意識的に生活を改善したことで、朝型(22時に寝て5時30分に起きる生活)に変わることができたからです。 最初のうちは、なかなか寝付けなかったり、起きるのがつらかったりしましたが、今ではスムーズに入眠・起床できるようになり、健康状態や生産性の向上を実感しています。 私の遺伝子が「朝型」であっただけかもしれませんが、客観的にみて、生活リズムが「夜型」から「朝型」に一変したのは確かです。 夜型の人が無理に朝型の生活を送ることで、逆に生産性が低下する、といったことも考えられるため、手放しで万人に「朝型生活」をおすすめすることはできません。 とはいえ、お伝えしてきたとおり、朝型生活には実に多くのメリットがあり、「朝型生活か否か」はQOL(生活の質)を大きく左右する重要な要素であることは確かです。 「自分は夜型だから無理」と、はなから諦めるのではなく、「朝型に変われるかもしれない」「本当は朝型かもしれない」といった希望をもち、一度は朝型生活に挑戦してみることをおすすめします。
参考
- e-ヘルスネット(厚生労働省)|睡眠・覚醒リズム障害